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そばとうどんと油揚げ
7P
しおりを挟む「ん?あぁ、正面からなんて無謀だと思う。愚かで馬鹿馬鹿しいと思うがな、兄上が、頭領がそう決めたのなら従うさ。異論はないな?なら、さっさと支度をして出発するぞ」
これだ。心配そうに見つめる目に気付いて顔を上げた和鷹は、スッと立ち上がってパンパンッと手を叩くと準備をしに自室に戻ってしまう。
まるで、何かを諦めたような暗い目をしていた。蕎麦屋に入った時の爛々と輝いていた目とは正反対。
「お前達、いつものように殺さない程度に大暴れしてやれ。くれぐれも隊長達幹部には気を付けて、無理だと思ったらすぐに逃げろ。いいね?」
皆を見渡す黒鷹に、各々が「はい」だの「にゃー」だの「よっしゃーっ!」だの「御意」だの返事をする中、高遠は小紅をキッと睨みつけていた。
「頭領、こいつも連れて行くのかよ?盾くらいにしかならねぇじゃねぇか」
「高遠は小紅ちゃんが新選組の密偵だと思ってるんだろう?もしもそうなら連れて行けばほら、ボロが出るかもしれないし。それに、向こうの反応を見てればわかるでしょ?」
「なるほどな。じゃあ、マジで密偵だったらどうすんだよ?夜鷹様の娘だっていうのは本当なんだろ?それは信じるけどさぁ……」
つまり高遠は今、小紅を仲間として信頼できるかどうかで激しく悩んでいると。新選組の密偵かもしれないという可能性は捨てきれないし、しかし夜鷹の娘というのは確定している。
奇襲には鷹の翼全員で向かう。屋敷での留守番はいないので、もしも新選組に読まれていれば屋敷を狙われてしまうのは間違いない。
だが、今までそんなことにはならなかった。絶対に読まれないような日、時間帯を黒鷹が選んでいたから。
けれど今回は敵の密偵かもしれないという小紅がいる。本物の密偵ならすでに、何らかの方法で新選組に奇襲のことを伝えているはずだ。
そうなれば小紅が密偵だとバレるのは当然。小紅1人の命を犠牲に鷹の翼を返り討ちにする算段を企てているかもしれない。
それを全てわかっているから、黒鷹はあえて小紅を同行させるのだ。事実は自分の目で確かめる。そしてもし、小紅が新選組の密偵だったら――
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