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そばとうどんと油揚げ
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しおりを挟む4人の言い争いに付き合っていたら、うどんやそばは放置されたその悲しみから出汁を吸って、倍くらいに膨張するのだろう。急成長だ。
黒鷹と和鷹、原田と永倉、店主と縮こまっている客達の視線が、静かに食事を再開した小紅に集まる。
「へーえぇ……気が弱い繊細な女の子だと思ってたけど、なかなかの大物だなぁー。どっちの女なんだよ?兄か?弟か?なぁ、どっちなんだよぅ?」
「ブフッ!ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ!」
「僕の。僕の大事な大事な小姓なんだから、誰も、手出しは許さないよ?」
「うっ!ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッゴホッゴホッ!!?」
小紅は吹いた。まず、先の原田の誰の女?発言にむせ込んでうどんが口から逃げ出しそうになったので慌てて、両手で押さえて背を向ける。
次にそれに対する黒鷹の発言にさらに激しく咳き込み、店主が注いでくれた水を飲んで落ち着く。いや、そう簡単に落ち着けるはずがない。
「…………左之助、帰るぞ。何か、今すぐ帰らねぇといけねぇ気がする」
「えぇー、なんでだよぅ新八さぁん!?魅堂の兄が急にえげつない殺気出しちゃって面白――んむぐっ!」
「小紅ちゃん、だっけか?松原さんから聞いてるぜ。せっかくの食事を邪魔しちまって悪かったな。でもな、小紅ちゃんはまだ何の罪も犯してねぇ。引き返すなら今だ。隣に、一緒にいるのは許されねぇことしてるやつらだってこと、忘れるなよ?じゃあな」
何かを悟った永倉が、小紅に絡んできた原田の口を塞いでそのまま店を出る。すれ違いざま、彼は黒鷹を冷たい目で睨んでいた。
ふと視線を向けると、和鷹は兄の発言に「ウゲッ」とでも言いそうな顔でドン引き。
水を飲み干して鎮火した小紅の隣に座り直した黒鷹は「迷惑をかけたね」と、店主に謝礼を渡して残りのうどんをすする。
終わったのか?他の客達もヤレヤレと胸を撫でおろしながら元の席に戻り、食事を再開。
和鷹は平然とうどんをすする兄と、頬を赤く染める小紅とを交互に見つめ、大きく深い溜め息を吐いてからようやく座った。が、箸を持つ手は机の上に置かれたまま動かない。
何を考えている?永倉と原田のこと?小紅のこと?黒鷹のこと?それとも、今晩の奇襲のこと?
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