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そばとうどんと油揚げ
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しおりを挟む否。クマのように見える大きな男だ。胸元から見える胸筋は分厚く、着物越しにも彼の肉体が筋肉隆々なのがよくわかる。
それがただの町人ならよかったのだが。クマ男の口から飛び出した名前に、和鷹の耳がピクッと反応した。
そばをすする手が止まり、ググッと眉間に力がこもる。穏やかな雰囲気が徐々に剣呑なものに変わっていく。
すかさず黒鷹が肩を叩いて無言で首を横に振るが、そばを口に咥えたまま和鷹は黒鷹をキッと睨み付けた。
「こっちが何もしなければ何もないさ。それとも和。そんなに悪戯をしたいのかい?そうかい、それなら止めないからいってらっしゃい、1人でね」
にっこり微笑む黒鷹に和鷹のこめかみがブチンッと音を立てた。噛み切ったそばを飲み込み箸をダンッ!と叩きつけると「そんなことするかっ!」と吠える。
当然その怒りはよく響き、周りの人達の注目を集めてしまうわけで。一気にシンと静まり返った店内で飲んだくれとクマ男も例外ではなく和鷹に目を向けた。
「んあっれぇー?もしかしてぇー、もしかしなくてもぉー、魅堂の弟……あ、兄弟そろってんじゃん!んあぁ?若い女がいる。あれか、ついに女ができたのかぁ?なぁなぁー?」
嫌な予感がしたクマ男が手を伸ばすよりも早く、飲んだくれのとんだ絡み酒野郎はビシィッ!と和鷹を指さすと酒瓶を片手にやってきた。
和鷹の肩に腕を回し、和鷹と小紅を交互に見る。強烈な酒の匂いに匂いだけで酔ってしまいそうだ。
慌てて飛んできたクマ男が後ろから飲んだくれ野郎を引きはがすが、時すでに遅し。ゆいいつの楽しみを台無しにされた恨みですでに怒りは頂点に達している。
ヌラリと椅子から降り、クマ男に羽交い絞めにされている飲んだくれ野郎と対峙。ギンッ!と怒り満点に睨みつければ、腰の刀に手を持って行こうとして……やめた。あ、我慢したな。
「はっ!天下の新選組の、しかも隊長様が泥酔し醜態をさらすとは笑えるな!この女については俺達よりも貴様らの方がよく知ってるんだろうがっ!?」
「てぇんかぁの新選組の隊長様でもぉ、局長様でもぉ、酒くらいは飲むもんだぜぇ?無礼講だ無礼講ぅ、なぁ、新八さぁん?」
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