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そばとうどんと油揚げ
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しおりを挟む思いっきりぶつけた割に、小紅の鼻血はすぐに治まった。
それでもすぐには離してくれなくて、小紅が「黒鷹様」と声をかけてやっと、渋々離れた黒鷹は苦笑しながら「ごめんね」と呟いて墓地を出た。
鳶と猫丸は今晩の仕事の潜入案を考えている。和鷹と桜鬼と高遠と雪は残りの屋敷の修繕と、さらに増えた牢の修繕に全力で当たっていたので飯当番不在。
今日の夕餉は各自で町で食べてくるようになり、小紅は黒鷹と和鷹の3人で蕎麦屋へ行くことに。
「この店、和のお気に入りの店なんだよね。ここのキツネそばの油揚げが絶品で惚れ込んだんだって?」
「そばの出汁は薄めでさっぱり食べやすい。だがその分油揚げの味付けが濃いめで、食べ進めていくと徐々に出汁に油揚げの甘辛さが加わってだな……」
店に着き席に座ると品書きを見ることなく和鷹はキツネそばを、黒鷹は素うどんを注文。ここ、蕎麦屋だよな?
「僕達、ここの常連客だから特別にうどんも出してくれるんだよ。裏の品書き、秘密だよ?」
妙に熱が入ってキツネそばについて語りだした和鷹を完全に放置して、小紅に品書きを見せる黒鷹。自分で話を振っておいて無視か。
元々は和鷹の行きつけの店だが何度も誘われ、ついでの常連になってしまった黒鷹。
そばはあまり食べないということを偶然耳にした店主。和鷹がほぼ毎日来てくれるからと、黒鷹にも常連になってほしいと黒鷹だけにはうどんを出してくれるようになったんだとか。
和鷹お気に入りの油揚げが乗ったキツネうどんでも、サクサクの天ぷらが乗ったタヌキうどんでもない、ネギだけの素うどん。
うどん本来の味を楽しみたいから素うどんが好きなんだとか。その言葉に店主は感動したらしく、黒鷹と和鷹の顔を見つけると満面の笑顔で「らっしゃい!」と叫び暖簾の奥から顔を覗かせる。
その笑顔が眩しくて、声があまりにも大きくて小紅がつい黒鷹の背に隠れてしまったのは言うまでもない。
「紅ちゃんは何にする?和と同じキツネそば?それとも僕と同じ素うどん?どうせ奢るし、他のを選んでもいいよ」
「じゃあ……いえ、お勘定は自分でします。私は初めての来店ですが、キツネうどんにします。もし店主がよろしければですが、お揚げさんを切ってくれませんか?」
少し考えたのち、小紅は店主を見上げてそう言った。店主は驚いて一瞬戸惑ったが、小紅が「すみません」と気を使ってそばを注文しようとしたところで「かまわねぇよ」と笑った。
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