鷹の翼

那月

文字の大きさ
上 下
113 / 386
暗闇の中で手探り

4P

しおりを挟む

 気づいていたのは黒鷹だけ。雪も高遠も桜鬼も、仲間であるはずの沖田と松原ですら見抜けなかった完璧な変装。

 頭領だからこそ、兄弟だからこそ、黒鷹には見抜くことができた。そして、本物の和鷹を案じて山崎に殺意を向ける。こんなことをしても無駄だとわかっていても、やる。

 空いている左手で刀を抜くと、山崎の右腕を容赦なく斬りつけた。右足を斬りつけた。

 逆手に持ち直し右肩寝深く突き刺すと、声色が変わった。笑顔が消え失せて影が差す。

「侮るなよ、僕は鷹の翼の頭領。お前を殺して和鷹を探しに行くのは簡単だ。だが死なない程度ギリギリで痛めつけるのは嫌いじゃない、むしろ好きだ」

「ぐぅっ……!はぁっはぁっ……夜鷹はそれほど、好戦的じゃなかったす――ちょ、おいおいおい、どこに刀向け――」

「手足を斬り落とされるよりも、目玉を抉られる方が痛くて恐怖を煽る。でもね、局部を斬るのはもっと痛いんだってねぇ?ホントかなぁ?僕、すっごく気になるなぁ。ねぇ、教えてよ?」

 山崎の血が滴る刀の切っ先は、彼の股間のあたりで止まった。徐々に押し付けられ、山崎の顔が青ざめる。

 黒鷹は至極本気だ。ひとおもいに命を奪って勘で和鷹を探しに行くことだってできるし、桜鬼達にも見せたことのない顔で拷問を楽しむことだってできる。

 この、桜樹よりも猟奇的で非道な黒鷹も正真正銘の魅堂黒鷹。こうして誰にも見られぬよう隠れてやるので和鷹以外は知らない。

 和鷹は昔、こういう場面に遭遇して知ってしまった。和鷹にとって恐怖の思い出になってしまったが。なにせちょうど、男の局部に刀を突き立てた時だったからな。

 当時の和鷹は怒鳴るのも悲鳴を上げるのも忘れて。バッ!と自分の股間を両手で押さえて青ざめたのだった。

 口の端を釣り上げる黒鷹の瞳に、恐怖に染まった、今にも泣きそうな山崎の顔が映った。抵抗ができない、体が動かない、声が出ない。

 ガタガタ震える体、失禁寸前。闇に彩られた黒鷹の青い瞳から目が離せない。

「さぁ、どこまで耐えられるかなぁ?」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・(5話完結)

青空一夏
恋愛
私(エメリーン・リトラー侯爵令嬢)は義理のお姉様、マルガレータ様が大好きだった。彼女は4歳年上でお兄様とは同じ歳。二人はとても仲のいい夫婦だった。 けれどお兄様が病気であっけなく他界し、結婚期間わずか半年で子供もいなかったマルガレータ様は、実家ノット公爵家に戻られる。 マルガレータ様は実家に帰られる際、 「エメリーン、あなたを本当の妹のように思っているわ。この思いはずっと変わらない。あなたの幸せをずっと願っていましょう」と、おっしゃった。 信頼していたし、とても可愛がってくれた。私はマルガレータが本当に大好きだったの!! でも、それは見事に裏切られて・・・・・・ ヒロインは、マルガレータ。シリアス。ざまぁはないかも。バッドエンド。バッドエンドはもやっとくる結末です。異世界ヨーロッパ風。現代的表現。ゆるふわ設定ご都合主義。時代考証ほとんどありません。 エメリーンの回も書いてダブルヒロインのはずでしたが、別作品として書いていきます。申し訳ありません。 元お姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれどーエメリーン編に続きます。

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ハンリュウ! 〜隋帝国の野望〜

魔法組
歴史・時代
 時は大業8(西暦612)年。  先帝である父・文帝を弑し、自ら隋帝国2代皇帝となった楊広(後の煬帝)は度々隋に反抗的な姿勢を見せている東の隣国・高句麗への侵攻を宣言する。  高句麗の守備兵力3万に対し、侵攻軍の数は公称200万人。その圧倒的なまでの兵力差に怯え動揺する高官たちに向けて、高句麗国26代国王・嬰陽王は一つの決断を告げた。それは身分も家柄も低い最下級の将軍・乙支文徳を最高司令官である征虜大将軍に抜擢するというものだった……。  古代朝鮮三国時代、最大の激戦である薩水大捷のラノベーション作品。

ジョーク集

柊谷
歴史・時代
古今東西のジョーク集です。ここのお話はあくまでもジョークです。特定の民族や宗教、国を差別、嘲笑するものではありません。とるに足らない笑い話として考えてください。

超克の艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
「合衆国海軍ハ 六〇〇〇〇トン級戦艦ノ建造ヲ計画セリ」 米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。 新型戦艦の質的アドバンテージを失ったと判断した帝国海軍上層部はその設計を大幅に変更することを決意。 六四〇〇〇トンで建造されるはずだった「大和」は、しかしさらなる巨艦として誕生する。 だがしかし、米海軍の六〇〇〇〇トン級戦艦は誤報だったことが後に判明。 情報におけるミスが組織に致命的な結果をもたらすことを悟った帝国海軍はこれまでの態度を一変、貪欲に情報を収集・分析するようになる。 そして、その情報重視への転換は、帝国海軍の戦備ならびに戦術に大いなる変化をもたらす。

処理中です...