鷹の翼

那月

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暗闇の中で手探り

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 涼しげな顔をしているが相当な力で押さえつけているようだ。逃れようともがいても、松原の左手は沖田の頭から全く離れない。

 黒鷹と松原は無音の言葉を交わした。今は何をしても、何を言っても無駄だと悟った沖田は雪に視線を向けて謎のニヤリ。

「な、何やのん沖田ぁっ!」

「ほらほら、あんな安い挑発に乗らない乗らない。その怒りは木材達にぶつけて……あの丸太を10等分にしてくれるかい?あ、勢い余って壊したらダメだよ?」

 再び暴れ出した雪をすかさず、作業途中の木材の方へと引っ張っていく桜鬼。彼の身長の10倍以上はある太く長い丸太の前に連れて行き、ノコギリを持たせた。

 持たされた大きなノコギリを見て、目の前で捌かれるのを待つ丸太を見て、隣で見張っている桜鬼を見て。そして、チラッと沖田を見るとイライラが湧き上がってきたのでついノコギリを丸太に叩きつける。

 バキィッ!と、いびつに丸太が割れた。ノコギリで丸太を割るって、名前に似合わない怪力の持ち主だもんな。

 桜鬼が溜め息とともに説教、その様子を見て沖田は大爆笑。雪は、無視した。桜鬼に謝って丸太の処理に取り掛かる。

 桜鬼は賢かった。雪を作業に専念させると同時に高遠も連れてきていたからだ。

 沖田のおもちゃにされる雪がいなくなれば次に狙われるのは血気盛んな高遠。彼には金づちを持たせ、雪が切り出した木材を片っ端から釘で打たせていく。

 2人の視界に沖田が入らぬよう、さりげなく目隠しとして立つことも忘れない。そのおかげで沖田はからかうのをやめた。

 いや、別の人物に狙いを定めたようだ。ニヤニヤして黒鷹に背を向けると帰るらしく手を振る。

「すすむーをトシ兄へのイケニエに捧げよー!雷を降らせている間にトシ兄の部屋を物色しないとねー、急げーっ」

 身内に行くのか。どこかで身震いをしているであろう山崎を探しに、沖田は急に軽くなった松原の手を振りほどいて走り出す。

 門を出てあっという間に見えなくなった彼の紫色の瞳は爛々と輝いていた。それはまるで、夢中になっているおもちゃを目の前にした子供のよう。

「…………屯所に帰るのが恐ろしくなってきたな。む?そんな目をされても、私はボロボロに破壊された牢で1夜を明かすつもりはないぞ」

「今なら牢に入れても簡単に逃げられちゃうね。泊まりに来たくなったらいつでも大歓迎だよ。まぁ、目が覚める前に首と胴体が別々の場所にあるかもしれないけどね」

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