鷹の翼

那月

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暗闇の中で手探り

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「――だぁかぁらぁ、帰る前にここに来た目的を教えやがれってんだ!白状するまで帰さね、だぁっ!?」

 小紅達と分かれたあと、黒鷹は登場と同時に庭で高遠の頭を引っ叩いた。

「あ、ごめん間違えた。いや、合ってるか。ということで本命に、せいっ。雪、君まで頭に血がのぼってどうする?どうせ桜鬼がいなかったら取っ組み合いになってたんだろう?」

「いてっ!す、すんまへん頭領。あのクソガキのことは空気以下やって考えとったんやけど、まだまだ精進が足りひんかったわ」

 いや、クソガキって言っても雪は21歳で沖田は19歳。2つしか年が違わないのにクソガキ扱いか。確かに沖田は性格的にも子供っぽいが。

 唸り声を上げそうなほど怖い顔で沖田を睨み付けている雪の頭を叩き、周りを見渡す黒鷹。

 作戦が失敗して早く帰りたい沖田と松原を、高遠が帰さない。今にも沖田に飛びかかりそうな雪を、騒動に気付いてやってきた桜鬼が羽交い絞めにして止めているところ。

 その傍らで、呆れ果ててものすっごくイラついている和鷹が腕を組んで傍観している。

 1度口が滑って喋りかけたとはいえ、沖田も松原もここに来た目的をそう簡単に喋るような男ではない。引き止めるだけ無駄だ。

 つまり、高遠と雪さえ落ち着かせればこの場は治まり2人は帰ることができる。

 まぁ予想通り。いや、和鷹が静かなのが少々気にはなるものの、他の面々は見事に想像していた通りすぎて思わず笑いが漏れた。

 黒鷹としては早く帰らせたい。今晩こそ仕事をしないと、生活費が底をついてしまうからだ。そう、実はそっちの面で焦っている。

「ねぇ沖田、そっちの頭に伝えておいてよ。満面の笑顔で『お互い、苦労するね』ってさ」

「えー、直接自分で言えば?両腕を斬り落として案内してあげるから『この首を差しあげにまいりました』ってね」

「僕は君の挑発には乗らないさ。結構真面目な話をしているんだよ。ね、松原、今日のところは帰ってくれるだろう?」

 無邪気な子供のように笑う沖田に苦笑し、歩み寄った黒鷹は自分よりも背が高い松原の背を叩いた。

「山崎君を回収しなければだよ、沖田君。私達の目的は果たしたし、山崎君はきっと負傷している。手当てをしてあげないと。それに、土方君に差し出して叱ってもらわなければ」

 真面目か。しばし黒鷹と無言で見つめ合った松原はムンズッと沖田の頭をわしづかみ。

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