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奪還と強奪
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しおりを挟む「あーびっくりした。報告ありがとう、紅ちゃん。山崎を奪還に来たか、それにしては爆発の間が良すぎる気もするが……」
「さっき戻ってきた桜鬼がどっちに行ったかはわからないが、俺は庭の方へ行く。沖田がいるとなれば雪は手がつけられなくなるからな」
「なら、僕達は牢の様子を見に行こうか。なにぶんあそこは狭いからね、多勢に無勢で来られたらいくら鳶でも苦しくなる」
引きはがされた途端にベタンッ!と土下座した真っ赤な顔の小紅の手を引き立たせると、黒鷹は楽しそうに笑みを浮かべながら牢に向かう。
和鷹は何か言いかけて口を閉じ、溜め息を吐くと背を向けて庭の方へと駆け出した。
黒鷹と和鷹の冷静さはさすがといったところか。分かれる直前、黒鷹は「そっちの判断は任せるよ」と目で言っていたようだった。
兄弟ならではの信頼か、頭領とその右腕としての信頼か。いずれにせよ、あんなことがあっても2人は固い絆で結ばれている。
硬すぎてポキリと折れてしまわなければいいが。杞憂か。確かな絆も感じられるがたまに、黒鷹は和鷹に憐みの視線を向けていることがある。
そして和鷹は黒鷹の真意を探っているようなキツイ視線を向けていることがある。何とも危うい2人だ。
「紅ちゃんはとにかく、僕の後ろから出てこないでね。何があってもだよ?」
牢が近づくにつれ、火薬の匂いもキツくなってくる。そして戦っているらしい、金属がぶつかり合う音が何度も聞こえてくる。
そこの角を曲がれば牢だ。黒鷹と小紅が飛び込むとちょうど、背後を取った山崎が猫丸に小太刀を振り下ろそうとしていた。
「させない……っ!」
すかさず鳶が、相手をしていた3人の忍を蹴散らし、山崎の前に滑り込む。とっさに素手で小太刀をつかみ、回し蹴りで山崎の側頭部を強打。
小太刀をつかまれていたため避けることも防ぐこともできなかった山崎は半身を壁に打ち付け、けれどわずかに呻いただけでタンッ!と壁を蹴る。
あまりの速さに目で追うこともできなくなり、姿を現したかと思えば天井付近で小さな爆弾を投げつけ、次の瞬間には猫丸の背後に立ち喉元に小太刀を突きつける。
山崎の仲間らしき黒い忍装束の忍が8人。小規模とはいえ派手に爆発した爆弾が仲間を巻き込もうともちっとも気にしないのが山崎丞という男。
子供を人質にとるとか、とても大人げない手段に出た山崎は猫丸の喉元に小太刀をグッと押し付け、鳶と黒鷹に目を向ける。
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