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奪還と強奪
4P
しおりを挟む屋敷の修復具合を見に来たのではなく最初からこの屋敷の破壊が目的だったのか?それとも自爆したのか?
とにかく、鳶と猫丸が無傷なはずがない。すぐに様子を見に行きたいが、目の前には敵である新選組が2人。
新選組で1番の剣豪と、薙刀と柔術使いの2人を雪と高遠が相手するにはいささか心細い。かといって、逃げ足の速さしか取り柄のない小紅が参戦すれば足手まといになる。
どうするべきなのかと小紅が迷っていると、すぐ隣で呑気な声が聞こえた。
「じゃ、ちぃの用事は済んだから帰るわね。またね、小紅ちゃん」
これ以上の介入はしない、とでも言いたげな流し目で去っていった千歳の背を呆然と見つめる小紅。あの狐モドキが小紅の足元に残っているのに気づき驚いて飛び上がりそうになったのを、グッと堪えた。
小紅には見えるのだとわかっているらしい狐モドキが懐いてしまって小紅の足にスリスリしても、千歳との約束を守るために耐える。
きっと千歳は、このあと高遠達がどうするのか、山崎がどうなるのかを狐モドキを使って確認するためにこの人懐っこい狐モドキを残した。
だったら邪魔をしてはいけない。少々動きづらいが、小紅は回れ右をしたのち走り出した。
沖田と松原が追ってくるかもしれない、2人の目的は自分だから。恐怖があった。けれど、安心して背中を向けて走ることができる。
口が悪くても高遠を、明るい兄のような雪を信頼しているから。小紅自身はまだ完全には信頼されていなくても、いつか心を許してくれると信じているから。
小紅は自分の務めを果たすため、全力で走る。煙が昇る牢を横目に、もう完全に覚えた廊下を走りその場所に向かう。
「黒鷹様、牢で爆発が!それに庭で新選組の沖田総司と松原忠司が……っ!」
黒鷹は部屋の前にいた。険しい表情で和鷹と何か話していたが、小紅の姿を見つけると会話を中断して、ガシッと小紅を受け止めた。
あまりにも急ぎ過ぎて、早く走りすぎて止まり切れなかったのである。おかげで黒鷹の腕の中に勢いよく飛び込み、抱き締められる形となった。
和鷹が「何をしているんだ、貴様ぁっ!!」と、すぐさま小紅の首根っこをつかんで引きはがしたのは言うまでもない。
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