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奪還と強奪
2P
しおりを挟む「や、雪りん。そんな露骨に嫌そうな顔しないでよー。僕でも傷つくよー?」
「うるさい、手ぶらで帰って土方に怒られろや。それとも、近藤の首を差し出してくれるんやったらあのネズミは返してやってもえぇけど?」
「いやいやいや、僕達が近藤さんの首をそう簡単に差し出すわけないでしょー。こっちはドブネズミの駆除をしてあげるって言ってるんだから、むしろ『ありがとうございます、お願いします沖田様』でしょー?」
「うーっわ、自分で様つけるとか有り得へんわぁ、何様やねん。あかん、あんたの顔見とったら吐きそうなってきたわ」
「どーした、具合でも悪いのかー?あ、ついにつわ――」
「早うどっか行け、腐れドアホウッ!!」
高遠顔負けの剣幕。まさに売り言葉に買い言葉。犬猿の仲とはこういうのを言うのだと、小紅は冷静にうなずいた。
この様子を見る限り、どうやら沖田と雪は何か因縁があるようだ。どうせ、沖田が雪に何かちょっかいをかけて怒らせたのがきっかけだろうが。
しかし雪がここまで荒れるとは。見ろ、高遠が鎮火してすっかり小さくなってしまっている。それに松原は苦笑いを浮かべたまま2人を止めようともしない。
まぁ、先に限界が来た雪が顔を真っ赤にさせながら、手加減なしの右の拳を沖田の左頬にめり込ませて決着がついたが。
速すぎて見えなかった拳を避けることができなかった沖田は一瞬姿が見えなかった。殴り飛ばされたのも速く、しかしすぐに体勢を立て直したのでズザザザァッ!っと踏ん張って急停止。
「うわぁーもう、相変わらずの怪力。受け身を取ってなかったら歯が折れちゃってたよー?」
新選組一の剣豪の名は伊達ではない。わざと殴られ、受け身を取って踏ん張ってみせた。避けるのは簡単すぎて面白くないからと。雪をさらに怒らせるために。
その態度にますます雪の機嫌が悪くなり、悪態を叫ぼうと口を開いた瞬間、聞こえてきた声は違う声。
「山崎なら奥の牢の中よ。助けるつもりはないくせに、松原さんももう少しマシな作戦を考えればよかったのに。残念だわ」
大きな溜め息を吐いて。ずっと黙って傍観していた、千歳が沖田と雪のちょうど真ん中あたりで立ち止まった。
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