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影
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しおりを挟む「私も質問を1つだけいいですか?私が今の父親の名前を、そうなった経緯を鷹の翼の皆様にお話すればどうなると思いますか?」
それはほぼ、小紅の秘密を全て打ち明けるということ。その、きっと全ての秘密を知っているであろう千歳に向けた質問は小紅にとって大きな選択。
千歳の返答次第で小紅のこれからが決まるのかもしれないのだから。
「まぁまず道具として使うでしょうね。最大限に利用して、復讐を成す。ってところかしら、今はね。今のあの子達と小紅ちゃんとの関係なら」
千歳の返答は意外にも早かった。特に考え込むそぶりも見せずにあっさりそう答えると、苦笑しながらさらに続ける。
「これから先、黙ったまま一緒に過ごしていって、信頼関係を築いていけば未来は変わるかもしれないわね。ちぃは、そうなることを願ってるわ」
「…………時々ふと思うんです。私のような者がここにいて、彼らと心を通わせてもいいのだろうかと」
「心が思うがままに。良いも悪いも、小紅ちゃんの心が感じるようにすればいいんじゃないかしら?そんなに難しくないことね。で、2人の喧嘩の理由だけど……」
小紅が抱えている秘密を、千歳は知っている。小紅が抱えている苦しみも、千歳は知っている。
だから小紅はつい頼ってしまう。弱音を吐いてしまう。自分が何のために秘密を打ち明けたのか、一瞬でも忘れてしまうほどに素になる。
千歳の言葉にハッと我に返ると座り直し、真剣に続きの言葉が紡がれるのを待つ。
「原因は小紅ちゃん、あなたよ。厳密にいえばあなたの名前ね。残念だけど、さっきの情報に釣り合う情報はここまでよ。これ以上は言えないわ」
原因が自分の名前なのだと言われ、「え、それだけ?」と驚くというかキョトンとしてしまっている。
中途半端だ。小紅の心の中でモヤモヤが膨らみ広がっていくのが目に見えてわかる。顔に「気になる」とでも書いているようだ。
小紅が胸の奥底に隠している秘密を明かしても、鷹の翼と新選組の対立の原因はわからない。それほどまでに価値があるのだ。
新選組の局長である近藤勇が未だに固く口を閉ざしているように、千歳もそれに合わせて誰にも知られることのないようにしている。
「でも、これだけは言えるわ。愛に満ちた、とってもくだらない理由だってね」
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