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桜樹と桜鬼
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しおりを挟む鬼面団。それは数年前まで江戸中で恐れられてきた殺戮集団。
夜中に忍び込んでは老若男女問わず手にかけ、金品を奪い去る。上玉の女や子供は裏で高値で売り飛ばしたり、夫婦がいたならば夫の目の前で妻を辱めた後皆殺し。
殺すのも、一息にやる時があればわざと急所を外して何度も斬りつけじっくりと死へと追い込み楽しむこともある。
金目のものに目がなくてひたすら盗むのが好きな者。殺すのが好きで片っ端から殺す者。気分のままに物を壊しヒトをバラバラにしたり犯したりする者。
それから、特に若い女の恐怖におののく様が大好きで、追い詰めて追い詰めてじっくりいたぶってから殺す者。
神出鬼没の、頭のイカれた殺人鬼達。出会ってしまえば絶対に、生きては戻って来れない。
時間をかける割には決して捕まらない、誰1人として素顔を知る者はいない。全員が鬼の面をかぶっているから。そして、悪ながらあっぱれな団結力で盗賊改めを上手く巻いてしまうのだ。
6人の団員の上で指揮を取っていたのは頭の鬼蔵という男。最強の男だった。我流の剣術では負けたことがなく、頭も相当切れるので様々な状況に陥った場合の解決策をいくつも練って教授していた。
全員をとらえ処罰を下すのは不可能とまで言われていた鬼面団だが。数年前、ある事件をきっかけにめでたくお縄になった。
彼らがある家に忍び込んでいる最中に、1人の男が乱入してきたのだ。盗賊改めではなく、通りすがりの一般人。
その男がどこの誰なのかは一切わかっていないが、噂では流れの武士だと言われている。帯刀していた。抜刀し、1人で鬼面団に立ち向かい盗賊改めが来るまでの時間稼ぎをした。とても腕の立つ男だったと。
盗賊改めが来ても彼らを1人も逃がさぬよう立ち回り、見事に一網打尽。全員に縄がかけられた時にはもう、男の姿はなかった。
とまぁ、全てが事実らしい噂だが。鬼面団は1人残らず処刑されて平和が訪れた。
……というはずなのに。桜鬼が2人いる?しかももう1人の桜樹がその鬼面団の一員だと?全くもって理解できない。
「こいつは鬼面団の頭、鬼蔵の右腕だった桜樹。若い女への耐性はついたと思っていたが、甘かったな。紅ちゃんと長い間一緒にいて抑えきれなくなったんだ」
「そん、な……まさか……」
そう。若い女が好きな者というのがこの桜樹のことだ。黒鷹達は彼のことを知っていて、こんな風に突然豹変することを“発作”と呼んでいた。
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