69 / 386
桜鬼と桜樹
3P
しおりを挟む昨日はとりあえず寝られるように荷物を寄せただけの、元物置き部屋を片づけて掃除をした。あとは必要なものをそろえるだけ。
黒鷹もついてきたものの、見ているだけで何もしない。小紅がせっせと掃除をして、重たいタンスを運ぶ時だって手を貸そうともしなかった。
小紅が1人でどこまでできるのか?それを見定めていたのかもしれないが。黒鷹の期待通り?小紅は最後まで、1人で全てを危なげなくこなしてしまった。果たしてその姿が黒鷹の目にどう映ったのか。
途中、町から帰ってきた猫丸が「お土産だにゃー」と特大の饅頭を手にやってきた。
「ごめんなさい。1つしかなかったのにゃー。小紅さん、食べる?半分こ?じゃあにゃー」
あっという間。特大の饅頭を黒鷹の手に握らせて、すぐに部屋を出て行ってしまった。1つしか買えなかったことにシュンとうなだれていた姿は耳が垂れた子猫を彷彿とさせる。
コテンと首をかしげて小紅を見つめていた時の真っ黒い目は「当然、頭領に譲るよね?」とでも言いたげだった。
もちろん小紅はそのつもりで、苦笑しながら「私は構いませんからどうぞ召し上がってください」と言いお茶を取りに行こうと立ち上がる。
しかしそれを何かと小紅を気に入っているらしい黒鷹が許すはずもなく。素早く手をつかんで引っ張った。
あっけなく体勢を崩した小紅はガクンッと彼の方へと倒れかかる、のを回避しようと勢いよく膝を突いた。打ちつけた膝頭からビリビリッと、痺れるような痛みが駆け巡る。
それと同時に、痛みよりも黒鷹の距離の近さに悲鳴を上げようと開いた彼女の口を、あんこたっぷり特大饅頭が塞ぐ。半分に割られている。
「んむっ!?はっ……な、何ですか、急に!」
「おぉー、良い反応。いやぁ、僕、こう見えて食が細いからさ。こんなに大きな饅頭、1人じゃ食べきれないからおすそ分けってね。あ、もしかして苦手だった?」
「甘いものは好きですが。でも、いきなり口に突っ込むなんてあんまりです。あやうく黒鷹様を敷いてしまうところでした」
「あはは。可愛い女の子に押し倒されるなんて嬉しいよ」
「もう、笑ってないで少しは叱ってくださいよ。私、黒鷹様のお力になりたいのです。おそばにいたいのです。たとえ――」
「紅ちゃん。つい口が滑ってしまったなんて、困るのは君の方だよね」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる