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桜鬼と桜樹
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しおりを挟む「――頭領、屋敷の修繕が終わったようですにゃー。酷かったのにゃー、疲れたんだにゃー」
お昼過ぎ。猫丸が子猫を抱いてやってきた。千歳が抱いていた、あの子猫だ。ちゃんと返してもらったんだな。
「ん、おつかれ。4人でお昼と、これで甘味でも食べておいで。あぁあと、和に今晩の仕事は中止だって伝えておいてくれる?」
「にゃっ!あー、にゃー……」
黒鷹から金が入った巾着を受け取った猫丸は「甘味」の言葉にパァッと目を輝かせ、次の「中止」の言葉にガックリ肩を落とした。
何とも子供らしい、正直な反応。実際の年齢よりも幼い雰囲気、言動にどうしても発達の遅れを感じる。
コクンとうなずき「残念だにゃー」と部屋を出ていった猫丸の姿が見えなくなると、小紅は黒鷹を振り返った。
「あぁ、そんな目で見ないで。今日は桜鬼に無理をさせられないからね。仕事は、僕達鷹の翼の誰か1人が欠けてもだめなんだ」
鷹の翼の人達にはそれぞれ、仕事の時の役目が決まっている。誰かが欠けている人の部分を代わりに受け持つことは不可能。
それぞれが重要な役目を受け持ち、最小限の人数で仕事に勤めている。欠けることは許されない。
だから、本調子でない者を無理に同行させて失敗、欠けてしまうことのないように慎重に時を待つ。それが頭領の役目。
「あの。私がここに来たから、桜鬼さんは倒れてしまったのですか?」
「そうだし、そうじゃない。明日になれば顔を合わせても大丈夫だと思うから声をかけてあげるといい」
「…………女性恐怖症、とか?」
「あぁー、うん。ちょーっと違うかな。というか逆?僕達からは言えないよ。知りたければ本人から直接聞くこと。それも、君が皆と仲良くなるためだよ」
そうは言われても。小紅は内心、どうしても知りたい衝動を押さえ込むのに必死だ。
女性恐怖症なら隣に立って町を一緒に散歩したりしない。近づくのだって話をするのだって困難な者もいる。しかし、逆?
女性嫌いの逆ということは、女性が好きすぎる、変態?いや変態はさすがに言いすぎか。
桜鬼の性格からしてそんな女好きには見えなかったが。小紅は桜鬼のことを思い出し首をかしげながらあれこれ考え込み、結局何もわからないまま自分の部屋へ。
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