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つながり
10P
しおりを挟む「そういう思いも、少しはありました。でも、ほんのわずかでも夜鷹様と共に暮らした間、あなた方の話をしてくださいました。それはそれは楽しそうで……」
「より一層憎たらしいでしょ。羨ましい?」
「羨ましいですが、憎くはありません。ただ、私が選ばれなかっただけのこと。夜鷹様は大変お優しいお方ですから。あなた方の家族になる方に、明るい未来を見出した。そして夜鷹様が亡くなられたと聞き、彼が愛し遺したあなた方にお会いすることを決意したのです」
「遺した、ねぇ……」
小紅の言葉は全て事実、真実、本心。要は、夜鷹の遺産である鷹の翼の彼らと会って共に暮らしてみたい。自分が知らない夜鷹を感じたい。そう思っていたということか。
しかしそれは小紅にだってあてはまることだ。小紅自身、言葉の通り夜鷹が遺した遺産であることに変わりはない。
小紅がどんな人物であっても、夜鷹と深く関わりのある者同士、平和に暮らしていくことはできないのか?
「実際に会ってみてよくわかりました。悪いことをする方々ですが、中には怖いお方もおいでですが、楽しい人達なんだと。夜鷹様が私ではなくあなた方を選んだのにも、納得です」
それぞれが抱える闇とまっすぐ向き合い、受け止め、温かい手を差し伸べた夜鷹を心から慕っている。夜鷹が死んで、頭領が黒鷹に代わってもそれは変わらない。
皆、夜鷹の愛で繋がっている。鷹の翼の絆は強固だ、何者にも断ち切ることなどできない。
ようやく顔を上げた小紅の頬は濡れていた。笑みを浮かべて「すみません。顔を洗ってきますので、どうぞ召し上がっていてください」と言い残して広間から出て行ってしまう。
本物の親子でも、過ごした時間は小紅よりも鷹の翼の方が長い。本物の親子でも想いは、注がれた愛は、小紅よりも鷹の翼の方が強い。
話しながらそれを痛感してしまった。もはや小紅と夜鷹は、親子と呼べる間柄ではないのかもしれない。
「っ、ふ……うぅ……ひっく……」
日も暮れて凍りそうなほど冷たい井戸の水で顔を洗っても、ズキズキ痛む心から熱い涙があふれ出る。
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