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つながり
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しおりを挟む「――それから私は、ある人にここまで大事に……大事?うん、大事に育ててもらいました。けれどもう私は18。十分1人で生きていけると、追い出されたのです」
今の小紅が話せるのはここまでだ。大事な部分が言えないのは反感を買うだろうが、仕方がない。
この話を信じるなら、夜鷹はかなり責任感に欠けた男だと言えるだろう。望まずだったとしても、血のつながったたった1人の我が子。
なのに母親がいないから、養う金がないから、上手く育てる知識と経験がないからと何度も手放した。
小紅の危機には駆けつけ手を取るが、血のつながりのない他人の子と一緒に暮らしているからというくだらない理由で再び手を離す。
覚悟が足りない。知識がなければ子育て経験のある者に習えば良い。周りの目など気にしなくても、隠さなくても良い。
養う金がなくても、誰かに相談するなりどうにかすれば少しは改善できたかもしれない。諦めが早かった。
黒鷹達にとって夜鷹が救いの神だとしても、小紅にとっては何度も捨てた最悪の父親。親子らしく一緒に暮らしたのはほんのわずか。
そのわずかでも、小紅は父親の夜鷹を鮮明に覚えている。育ててくれた恩がある。嫌うことなどできなかった。
「夜鷹様を恨んではいません。捨てられ、孤独に死んでいくはずだった私の手を取り、ここまで育ててくださった方に引き渡してくださったのですから」
「……で、その育ててくれた人っていうのは、どこの誰なのか教えてくれないんだろ?」
溜め息交じりに和鷹が吐き捨てた言葉は、小紅の首を縦に振らせた。振ったままうつむき「ごめんなさい」と震える声。
全てを話してしまえば、たとえ本当に夜鷹の娘だとしても鷹の翼にはいられない。そういう事情を抱えているとわかっていながらも、門を叩いた。
小紅は、鷹の翼にとっての毒。やましいことがあると確実にわかっていながら、なぜ黒鷹は追い出さない?
後々、仕掛けられた時限爆弾のように爆発して大惨事になるかもしれないというのに。
黒鷹は、ジッと小紅を見つめたまま何も言わない。何を考えているのだろうか?小紅の話の真偽?鷹の翼に来た目的?それとも、すぐさま追い出すか斬り殺すか?
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