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つながり
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しおりを挟むまだ来たばかりだから、疑わしいから。だから打ち解けられない。そう自分に言い聞かせたいのに。
積極的にできない。気配りができない。力になれない。自分の無力さに情けなくなる。小紅は、胸を押さえて座り込んだ。
こういうのを被害妄想というのか。唇を強く噛みしめる彼女は洗った湯呑みを拭くためのふきんを握り締めたまま、自分のふがいなさにどんどん沈んでいく。
「いっそ、全てを打ち明けられればいいのに……」
それができれば苦労はしない。というか、そんなことをすればどうなるかよくわかっているはずだ。
鷹の翼にいられなくなる。だけでは留まらず、全てを敵に回してどこにも行き場がなくなり頼れる人もいなくなってしまう。
何よりも、大切な人との約束を破ることになる。ある人と再会をするという約束を。
結局、しばらくそうしたまま時間をかけて気持ちを回復させた小紅は湯呑みを片付けてから黒鷹の元を訪れた。
ちょうど桜鬼が話を終わらせて退室した後で、黒鷹の向かいに温かい座布団が残っていた。
黒鷹の小姓なのだから何かやることはないかと尋ねると、彼は笑みを浮かべて「近くにいて、話し相手になってよ」と手招く。
ついさっきまで桜鬼が座っていた座布団を自分の隣に置いて、そこに小紅を座らせるとおもむろに彼女の手をつかんだ。
当然、肩を震わせて驚いた小紅は反射的にバッ!と振り払い壁際に跳び逃げる。1秒とかからないくらいか。その素早さに黒鷹は瞬きを3回。
しまった。気を張りすぎてつい、過敏に反応してしまった。身構えて鋭い目つきで睨みつける。とっさのことに、目の力を抜こうにも上手く抜けない。
「綺麗な、しっかりした手をしているね。取って食いやしないから、おいで?」
と微笑んだ。敏感で俊敏なのは彼女の癖だ。バクバクいう心臓を落ち着かせ、静かに息を吐いた彼女は座布団を少しだけ離して座った。
「乱暴なことを、申し訳ありませんでした」
「いいよ、僕も悪かったし。女の子でマメだらけの手をしていても、ここでは誰も気にしないよ」
小紅はとっさに隠したのだ、手の平にいくつもできたマメを。マメが潰れたあとに捲れて血で汚れた皮膚を。
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