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着物の色
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しおりを挟む「ごめんなさい。皆さん悪い人じゃな…………うーん、悪い人、ですよね。とにかく、それぞれお優しい方だとは思うのですが」
「僕が優しく接してくれるし、お節介を焼いてくれるし、1番話しやすいと?」
「お、お節介ではないです!まだ、出会って間もないですが、桜鬼さんはしっかりしてらっしゃいますし頼りやすいと……」
「つまり、高遠は凶暴だし雪達はどこかズレているから頼りないってことだね」
「い、意地悪ですっ!私がそんなことを思ってないってわかっていらっしゃるのに。楽しんでらっしゃいますね!?もう、そんなに笑わないでくださいっ」
腹を抱えて笑っている。というほどではないが、口元に手を当てて「クスクス」笑っている。
小紅の扱いに慣れてきたのか、からかって楽しんでいるようだ。歩きながら、わざと上半身をひねって背を見せる。
その背中が、肩が小刻みに震えている。それで、遠慮して笑っているつもりなのか?
見ろ。小紅の顔が、耳が、首が真っ赤だ。かわいそうに、頭から湯気が出そうなほど恥ずかしいのだろう。キュッと口を引き結んだ顔を真下に向け、摺り足気味にちょこちょこと歩いている。
うっすら涙さえ浮かべている小紅は感じた。目の前の彼の雰囲気が、変わった。
「……小紅ちゃんは全然人を見る目がない。僕は優しくしているつもりはないし、僕だって、鷹の翼なんだ」
それは唐突だった。背を向けて1歩先を歩いている桜鬼は「見くびるな」とでも言いそうな、脅す口調で低く呟いた。
初めて、小紅は今の桜鬼を“怖い”と感じた。不意打ちのような攻撃に返す言葉が見つからず、怖い背中を見つめることしかできなかった。
人間観察ばかりしていた小紅が、人を見る目がない?思わぬ言葉に、けれどもしかしたらそうかもしれないと。まるで凶器のような言葉をしっかり受け止める。
しばらく、お互いにお互いの理由でしゃべることもできず無言で歩く。
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