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着物の色
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しおりを挟むこれがかなりひねくれたというか変わり者なわけで。心が大海原のように広く優しい桜鬼でも返す言葉を見つけられなくなるような、ドン引き発言をするそうだ。
まともに相手をできるのは黒鷹と夜鷹だけなんだとか。知りたい情報を、巧みな話術で上手く聞き出すことができるのはこの2人だけ。
桜鬼は「どんな人かは会ってからのお楽しみってことで」と微笑んだ。
すると小紅の様子がおかしい。長いお経を暗記していて、忘れてしまった部分を何とか思い出そうとしているかのような顔で桜鬼を見上げ、口を開く。
「…………お話します。私のこと、今話せることは全て、夕餉の席で話させてください」
「わかった。黒さんに言っておくよ。その口ぶりからすればまだ、全部は話せないようだね?」
「はい、すみません。どうしても言えないんです。だから、怪しいと思われるのは承知の上で鷹の翼に来たんです。でも必ず、全てを話せる時は来ますから」
これが温厚な桜鬼ではなく高遠なら、女でも気にせず胸ぐらをつかんで持ち上げ罵詈雑言を浴びせていたに違いない。
一体なぜ急にそんなことを言い出したのか?それは今夜やってくるのが情報屋、だから。
それほどまでの情報を持っているのなら当然、小紅が必死に隠し通そうとしている情報も持っている。その情報を、どれほどの価値があるのかはわからないが、黒鷹などに買われてしまえば全てが水の泡。
どうせ知られてしまうのならと、打ち明けることを選んだ。ただし、情報屋でも知らないであろう深い部分の秘密はまだ伏せておく。
「うん、頑張ってね。それにしても……どうしてそれを頭領である黒さんに言わないで僕なんかに?」
「…………正直に言っていいですか?」
なぜかと問われればたちまち、今度は苦い丸薬をいくつも噛み潰したような表情になる。言えないのではなく、言いづらいことだ。
キョトンとする桜鬼が「いいよ」とうなずくと、顔を反らして沈黙したのち、消え入りそうな声で「1番、マトモそうな方だからです」と答えた。
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