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着物の色
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しおりを挟むどうやって金を稼ぐつもりだ?鷹の翼の資金源はそのほとんどを、義賊行為で盗んだ他人の金が占めている。しばらくは見習い扱いの小紅は手取りが少ない、もしくは全くないはず。
はてさて。他に稼ぐ方法があったとしても、小紅が雪と桜鬼に金を返すことができるのはいつになることやら。
「う、わ…………うん、とっても、よく似合っているよ」
まただ。今度はハッキリ見た。小紅の姿を見たほんの一瞬、苦しそうに息を詰まらせている。
そしてそのあと、はにかむように笑ってわずかに頬を赤く染める。品のある、大人の可愛さが引き立つ小紅の姿が予想以上だったようだ。
桜鬼は照れ笑いを浮かべながら頬を掻き、さりげなく彼女から視線を反らした。
「試着する前に見てたよね。その色が好きなんでしょ?お金なんか気にしないで、最初から好きなものを選んでくれたらよかったのに」
「私はお金を払ってもらっている身、そういうわけにもいきません。でも……ありがとうございます。お代はなるべく早くに返せるように努めます」
この赤の着物は、最初に目に留まり小紅が気に入っていた着物。最安値に決めてはいても、無意識に見つめていたに違いない。
「お代はいらないよ。その着物は僕と雪からの、鷹の翼の新しい一員になったお祝い。まぁ、どうしても礼をしたいっていうんなら、鷹の翼の一員としてこれから一生懸命働くことだね」
「粉骨砕身、できることはまだ少ないかもしれませんが力の限り務めさせていただきます!」
「ちゃんとした女の子は初めてだから、家事とか期待するよ?雪は家事が、特に料理が苦手だからね。料理が1番得意なのは和さん、次に黒さんだよ」
「ご兄弟様が?失礼ながら意外です」
「先代の夜鷹様が得意だったんだよ。1番付き合いが長い2人は色々なことを先代から教わっているんだって」
「夜鷹様がお料理が得意だったなんて、もっと意外です。大変失礼ながら、そんな風には見えませんでした。だけど…………1度だけ。振る舞っていただいたお味噌汁は、とても美味しかったです」
小紅が夜鷹とどう関わっていたのかはまだわからない。確かなのは、他の鷹の翼の人達のように命を救われた恩があるということ。
夜鷹の手料理の味を思い出しているのか小紅は目を閉じ、汁椀を持つように両手を上げて小さく溜め息を吐いた。
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