鷹の翼

那月

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邂逅

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 高遠にギンッと睨みつけられ、小紅は桜鬼の背中に隠れた。彼女がここまで高遠に噛みつかれるのは、そして皆から嫌われる理由は2つ。

 1つは、彼女が自分の素性をはっきり明かさないからだ。自分から来て助けを求めておいて何も言わないのは失礼極まりない。

 彼女が打ち明けないから彼らもまた、歩み寄るのを拒む。本当に新選組の狗だったらと考えてしまうから。

 箱の中身が爆弾だとわかっていて受け取るバカはいない。あぁいや、黒鷹なら面白半分で受け取ってしまいかねないが。

「どう考えてもこいつは新選組の狗だろうが!俺様達に見せつけるように、あんな色の着物なんか着てきやがってよ……」

 そしてもう1つの理由。それは小紅自身、今やっと気が付いたようだ。自分が着ていた着物の色を思い出し、ハッと気づいた小紅は桜鬼の着物の袖をギュッと握った。

「新選組の隊服が浅葱色で、私の着物がそれより薄い水浅葱色だから、ですよね?さっきおっしゃっていた、私が皆さんから嫌われる理由も……」

 小紅が言うように、新選組の象徴とも言われる隊服の色はいわゆる水色、浅葱色。そして彼女が着ていた着物は浅葱色よりも少しだけ薄い水浅葱色。

 とてもよく似た色なので、新選組の愛好家などは好んで身につけたがる色なのだ。だから高遠は、小紅が新選組に連なる者か愛好家だと思った。

 高遠以外も、全員がそう思っているに違いない。だから小紅の風当たりは武家出身の桜鬼よりも強い。

「そうだね。あまつさえ君は怪しいのに、あの色はちょっと残念だよ。だから新しい着物は、水浅葱色が好きでも別の色にした方がいい。これからも鷹の翼にいたいのなら」

「軽はずみなことを、ごめんなさい。私、もう鷹の翼にしかいられないんです。家事でも雑用でも何でもやらせていただきますから、どうかいさせてください。お願いします」

 小紅は2人に向かって深々と頭を下げた。それでもやっぱり、自分の事情は言わないのか。まだ言えないのか。

「僕は歓迎するよ。こんなに可愛い、マトモな女の子がいると華やかになるからね。改めてよろしく」

「俺様は認めねぇ。夜鷹様の縁者だろうが隠し子だろうが、てめぇが腹ぁ括るまでぜってー認めねぇ。そもそも、女が嫌いだ!」

 2人は同時に、真逆の返答。高遠、絶対に最後の部分が本音だろう。

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