鷹の翼

那月

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邂逅

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 慣れた足取りで隊士達をかき分け人だかりの中心部に足を踏み出した桜鬼は、しゃがんで高遠の頭をペシッと叩いた。

 地面に伏せられている高遠が何か吠えようとしたので、今度は叩いた手を少し下げて鼻をつまむ。そのまま、ギュウッとつねっている。

 その状態で松原を振り返るとペコッと頭を下げ、もう片方の手で高遠の頬もつねる。爪が食い込んで、高遠の赤い瞳にみるみるうちに涙が湧き出る。

 おおかた、小紅がやってきたことにイラついて町へやってきたはいいがイライラは治まらず、ちょうど出会った新選組の見回り隊に八つ当たりをしていたといったところか。

 小紅が新選組の間者であろうとなかろうと、いきなり食ってかかられて「はいそうです」なんて言うわけがあるまい。

 松原は高遠を押さえ込んでいる3人の隊士を下がらせ、桜鬼に「お互い、苦労するな」と苦笑。

「こちらにも非はある。早々に立ち去るか私がなだめるかすればよかったのだが、こやつが喧嘩を買ってしまってな。新入りで少々短気な故、しつけ直さねばならん」

 そう言って、高遠よりも少し若い隊士の頭を下げさせる松原は「あい、すまなかった」と自分も一緒に頭を下げた。

 なるほど、高遠のように目つきが悪い。狂犬同士、目が合えば喧嘩の合図か?狂犬隊士は目を反らせボソボソと「すんませんっした」と呟く。

 まるで松原は狂犬隊士の、桜鬼は狂犬高遠の保護者のようだ。いや、ここは飼い主といったところか?

 それにしても狂犬隊士に限らず、他の隊士達もしつけが足りないんじゃないのか?さっきから殺気がすごい。

 狂犬隊士とは違って表情には出していないが、突き刺さるような殺意がほぼ全員から桜鬼と高遠に向けられている。

 桜鬼がやってきてからはさらにザワついた。高遠1人に対して大勢の新選組、見ようによれば弱い者いじめ。しかしそこに桜鬼が加わるだけで、一変する。

 そして桜鬼もまた、顔こそは笑ってはいるがずっと周りを警戒していて、ここら一体の空気が緊張でピリピリしている。

 敵同士なのだ。ついさっきまで部外者だった小紅はそれを肌で感じ、身震いをする。

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