鷹の翼

那月

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鷹の翼

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 ――その頃、小紅は雪に連れられて部屋の中に上がり込まされていた。

「んー、どっちがえぇやろか。橙色かー、若草色かー……せや、小紅ちゃんやったらこっちやな!」

 押入れのタンスから引っ張り出された2種類の着物を手に、小紅の体に合わせて色を見ているが。やはりというか、いささか小さい気がする。

 小紅と雪とでは、雪の方が頭半個分小柄。着物の丈も、それなりに短いのだが。

 散々悩みに悩んだ結果、若草色の着物を適当に丸めてタンスに突っ込もうとした雪を慌てて止めた。小紅が丁寧に折りたたみ、シワにならないようタンスの中にしまい込む。

 雪の性格上、自分で着物を綺麗にたたんでしまうのはなさそうだ。では、普段は一体誰が管理を?考える間もなく、雪が手を伸ばしてきた。

「ほな、早速着てみよか。帯ほどいてー、脱いだ着物は洗濯するさかいこの桶ん中に入れてなー」

「わあっ!?ゆ、雪さん、あああああああのっ……じ、自分でできますから、そのっ」

 小紅が驚いて顔を真っ赤にするのも無理はない。雪が、彼女の橙色の帯をほどいて脱がしにかかったからだ。素早くほどいた帯を桶に入れ、着物に手をかける。

 そこでようやく、小紅が必死で着物を押さえているのに気づいた雪は手を止めた。不思議そうに、グリンッと首をかしげる。

「なーに恥ずかしがっとんのや?女同士、隠すもんはあらへんやろ?あ!もしかして、背中に刺青でも入っとんのか!?」

「違います、入れてません!え、お、女同士……?あっ!」

 刺青を見たいという好奇心で一気に着物を剥ぎ取った雪は、綺麗な素肌に落胆。新しい着物を羽織らせながら「ハズレやぁー」とゴネた。

 いやいや、そこ、ゴネるところではない。小紅の必死の抵抗と叫びを完全に無視しているのか気付いていないのか、まだまだルンルンで手を動かしていく。

 普通の女性の着物の着付けは不慣れなのか、手つきがおぼつかない。結局最後は小紅が自分で着て帯を締めたわけだが。

「あの、大変失礼とは存じますが。雪さんって、女性なんですか?」

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