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いざ、鷹の巣へ
7P
しおりを挟む青年もまた、小紅を信じてなどいなかった。中に招き入れて油断させておいて、ボロが出るのを待っていたのだろう。
満足そうに「ご名答」とうなずくと、やっと手を離して部屋の真ん中に腰を下ろした。向かいに座るように促し、彼女も腰を下ろすと腕を組む。
顔には常に笑みが見られるのに、なんだか楽しそうなのに。あの5人と同じ、内を探る鋭い目をしている。
「頭領である黒鷹様の小姓ということは、頭領自ら私を監視するということですよね。でも、私が言うのもなんですが危険ではないですか?」
「あははは、和にも怒られそうだよ。でも、僕の決定だ。働かざる者食うべからず。生活は保障するから、しっかり働いてもらうよ。それに僕は、君なんか相手にわずかにも隙を見せるとは思っていないから、ね?」
「……私のこと、詳しくは言及しないのですね」
「そんなに根掘り葉掘り聞かれたいの?変わってるねぇ。生活に困窮して僕達を頼ってきた女の子を、いきなり質問攻めにするほど僕は落ちぶれていないよ」
気が弱く嘘が吐けないのは見抜かれている。だがそれでも、頑なに胸の内を白状しない小紅の素性を警戒していないのか?
もしかしたら体に暗器を隠していて、隙あらば黒鷹の命を奪おうとしている腕のたつ暗殺者かもしれないというのに。全ては芝居で暗殺者だったとしても、小紅から命を守れるという自信に満ち溢れている。
少し……いや、かなり余裕をかまし過ぎてはいないか?とりあえず来たばかりだし今日1日は様子見、ということか?
ピンッと背筋を伸ばした正座。膝の上に置かれた両手の指はまっすぐ揃えられていて、けれど堅苦しさを感じない自然な綺麗な姿勢。
小紅もまた、オドオドはしていても心のゆとりを持ってここにいるのかもしれない。2回ほど深呼吸をした彼女は、ゆっくり部屋の中を見渡す。
本棚に本がたくさん入っている。この時代にはまだ珍しい、西洋の資料としての本もちらほら見える。
掃除はしっかり行き届いていて、余計なものがない。というか、この部屋には本棚と机以外には物がない。おおかた、他は押し入れの中に片づけられているのだろう。
物のなさといい掃除の丁寧さや片づけ方を見るからに、この部屋の持ち主はかなりの几帳面か綺麗好きか。この黒鷹がそうだとは到底思えない。
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