鷹の翼

那月

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いざ、鷹の巣へ

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「最後は丸だにゃー。猫丸っていうんだ、よろしくにゃー。歳は……たぶん11?赤ん坊の時に夜鷹様に拾われたから、10か11か12だと思うんだにゃー。あ、猫は好き?」

「え?あ、うん、猫は好きよ。可愛いわね」
 鳶の隣、グググッと視線が下がって頭に子猫を乗せているのは猫丸。雪よりも背が低いのは子供だから。

 明るい茶髪にクリクリの黒い瞳、あどけない顔立ちは子供らしくこれはまた可愛らしい。黄土色の着物に黄緑色の帯を巻いているが、やたら汚れている。

 足元でじゃれついていた白と茶色の混じった猫を抱き上げ小紅に見せる。が、猫は何を感じ取ったのか、撫でようと伸ばされた彼女の指先を「ニャッ!」と鋭い爪で引っかいた。

「トラさん、何してんのにゃー!小紅さん、大丈夫にゃ?ん、痛いにゃ?」

 猫丸はトラさんと呼んだ猫の頭を軽く叩き放すと、慌てて血がにじみ始めた小紅の指先を――舐めた。

 小さな両手で小紅の手を包み込み、必死に指先をペロペロする姿はなんとも健気。だが、これはちょっと……

「だ、大丈夫だから!ほら、大したこともないし!ありがとう、猫丸君っ」

 子供相手と言えど、突然のことに耳まで真っ赤になった小紅はもう片方の手で猫丸の頭を撫で、肩を押して離れた。

 猫丸曰く「擦り傷切り傷は、少しなら舐めれば治るにゃー」らしい。たしかに指先の血はもう止まっているが、彼にとって傷口を“舐める”行為は“普通”のようだ。

 まるで動物のような行動、発想。後ろでツーンとしているトラさんを抱き上げ「にゃーっ、にゃ、にゃっ!」と、猫語を話す。

 その姿を見たら、「ニャーン、ニャーン」と返すトラさんと会話できている様を見てしまったらもう。この幼い猫丸もまた、深い事情を抱えているのだと悟ってしまう。

 猫達の群れの長である猫丸は、長らしく粗相をしたトラさんを叱る。黒く愛らしいクリクリの瞳の瞳孔が、キュッと細くなったような気がした。

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