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いざ、鷹の巣へ
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しおりを挟む「こ、小紅、です、初めまして。武術の心得はありませんが家事は得意です。できることは何でもやらせてください、よろしくお願いします!」
「小紅、か………………あぁ、紅ちゃんには僕の小姓になってもらうことにしたから、虐めないようによろしく頼むよ。じゃ、高遠から順に名乗ってやって?」
出会ってほんの少ししか経っていない。しかも手紙を持っているというだけで屋敷の中へ入れ小姓にするなど、5人の首を縦に振らせるにはいささか力不足。
5人が黙り込んでしまうほど、小紅という少女は怪しすぎた。見た目も、その震える体にまとう雰囲気も。
こんな山奥のボロボロ屋敷にまでわざわざ、それも年若い女性が1人で雇ってくれと訪れるなど。普通の町人の娘ならば出来はしない。
少女のように若い娘でなくとも。いずれは新選組に召し捕られてしまうと未来がわかっている、小規模な義賊集団の仲間になろうなどと。彼らのように行き場をなくした者か、はたまたかわいそうに精神を病んだ者か。
青年が彼女から詳しい話を聞かずにここまで来てしまったのが悪い。少女は自ら、前者だと言っていたか。
なぜ彼らを頼るのか、金に困っているのか?前頭領とはどんなつながりがあるのか?せめてこれくらいは聞いておくべきだったな。
彼女自身、問われないのを不思議に思っているに違いない。さっきから戸惑うばかりで声が震えている。
前頭領の手紙は置いておいて。小紅がもしも裏のある人物だとしたらそれは、きっと新選組の間者である確率がきわめて高い。
もしくはそのもっと上、下手すればお上の直属の密偵か。この怯えようは演技のようには見えないが、果たして。
そろそろ本気で縛につかそうと、昨日の襲撃も作戦のうちだったりするのかもしれない。弱っているうちに小紅を侵入させ、部屋の配置や彼らの個人的な情報などを流してもらう。
そうして得た情報を元に確実に彼らを一網打尽にできる作戦を練り襲撃するのだ。
それが大いにあり得るのに、なぜ青年がのほほんとゆったり構えているのか、5人にはわからない。しばらくの沈黙ののち、しびれを切らしたある男が吠えた。
「得体の知れねぇ女なんか入れてくんなよ!べ、別に、寝首をかかれそうで怖いとかじゃねーけどよ!俺様は最強だからなぁっ!」
変な言い訳を付け加えたのは、青年に「高遠」と呼ばれた男。青紫色の髪は寝起きから一切触れていないのかボサボサで、小紅を睨み付ける赤く燃える瞳は獲物を狩る獣のように鋭い。
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