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見られているということ
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しおりを挟む華南は大きな大蛇の姿のままクロキツネの前に現れた。けれどクロキツネは面の奥では驚いていたかもしれないが、悲鳴は聞こえなかった。
敦彦への攻撃をやめ、踵を返しすぐに姿を消したのだそうだ。三童子の1人、神楽童子が変身の能力を持っているのは身内でなくとも知っていることだが。クロキツネも知っていた?
「駿河さん、お怪我はないですか?その……結構激しく、戦っていたようだったので」
頼もしいのに子供っぽくて呆れる母親から目を反らせ、不運続きの敦彦に向けられる。琴音は敦彦に、疑問を抱いている。
なにせ敦彦は、怪我をしていないどころか疲れている様子が全くない。クロキツネと何度も刃を交えたはずなのに。弱いことで有名な敦彦なのに。
「大丈夫。あぁでも、怖かったよ。惹きつけてここを離れようとしたんだけど、逃げ回るので精いっぱいで。華南様が来なかったら今頃僕は死んでいたかもしれない」
と、苦笑い。
「怪我は、琴音ちゃんの方だ。ごめん、巻き込んで。嫁入り直前の琴音ちゃんの腕に怪我なんて、あの2人に知れたら――」
「琴音に怪我だとぉっ!!?」
華南が叫んだ。文字通り、敦彦の耳に突き刺さるほどの絶叫。そして、瞬きを1回の間に琴音に飛びつくと二の腕の小さな怪我を見つけサッと青ざめた。
やばい。緊張から解放され気が緩み過ぎて、口がすべってしまった。そーっと足音を立てないようにこの場から去ろうとするが、腕をつかまれた。
右腕と左腕がガッチリつかまれ、グッと足が地面を離れる。敦彦は、背後の巨大な恐怖に呼吸を止めた。
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