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逃した魚は大きいし美味い
4P
しおりを挟むバッ!聞き慣れた声ながらも2人、同時に振り向くがそこに声の主はいない。
代わりに、敦彦の頭に何かがベチッ!とぶつかった。ぶつかったものは大きく重たい。おかげで敦彦は顔から地面に激突。
そして和紗は、クンッ!と急に首の後ろを引っ張られ。すごいな。反射的に木刀を振り抜きながら後ろを振り返る。が、空振り。
「だっせぇなぁ敦彦ぉ?駿河の異端児嫡男はやっぱり、人間だから力が弱いうえにどんくさいんだなぁ?」
「だめだぜ和紗ぁ。異端児のそばにいちゃあ人間がうつっちまう。寄り添うなら俺達にしろよ、ほらぁ!」
起き上がろうとした敦彦の背中に、男が腰を下ろす。また別の場所で、よく似ているが別の男の声も聞こえた。現れたのは、額の真ん中に太く長い角を生やした男鬼が2人。
敦彦の背中に座る男は、さきほどぶつけた大きく重たいものを敦彦の顔へ。生臭い。大きな魚。
呻き顔を背ける敦彦を笑いながら、わざと魚を顔に擦りつける。敦彦がやり返さないと知っているからだ。敦彦は決して、嫌なことをされてもやり返さない。暴力を振るわない。
その様子に「やめなさいよっ!」と声を上げるが、和紗は首の後ろに引っかかっている釣り針のせいで動けない。
もう1人の男が持っている釣竿がグンッ!と引かれ、和紗は男の方へとよろける。
男は片腕を伸ばし、釣った魚を捕まえるように和紗を捕まえ腕の中に抱こうとする。嫌なニヤニヤ笑い、女好きか。
だがそこはよく鍛えられている、鬼神候補生の和紗。引っ張られながらも好機ととらえ、グッと握り直した木刀を振り上げた。
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