惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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永遠の鬼ごっこ

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 そんなこと、千年もの年月を生きた俺にはわかりきっている。だからこそ、信じて約束を交わしたのだ。


 この俺が珍しく、信じるに値する人間だと見込んだから。不和歌磨呂という1人の人間の男を信じてみたいと思ったのだ。


「はぁ……はぁ……ふっ、滑稽だ」


 自分の姿が滑稽すぎて、約束した湖に到着した途端に笑いがこぼれた。笑いで体が震える。歌磨呂は、まだ来ていないのか?


 今は何時だ?時計なんて持っていないからな。急かされたせいで少し早すぎたか。息を整え、周りを見渡す。歌磨呂はまだ来ていないよう……いや、いた。


 湖の、ちょうど俺がいる場所の反対側にいる。地面に手を突いてうずくまっている。


「おい、どうした!?しっかりしろ歌磨呂っ」


 俺は迂回するのももどかしく、足だけ鬼化してまっすぐ湖面を走り彼の元へと向かった。水面を走ることなど、その気になればわけない。


「と、きひ、さ…………あ、蒼輝さん……私……」


 苦しそうに荒い呼吸を繰り返し、額にはいくつもの汗粒が浮かんでいる。抱き上げると、半分ほどかすんだ歌麿呂の目が俺を求める。


 一瞬、腕に抱えた歌磨呂の目が赤く染まって見えた。酒呑童子の目に見えた。かなり顔色が悪い、ガタガタ震えて怯えている。


 なるほど、そういうことか。体の内側から蝕まれる感覚は、それは恐ろしいものだろう。


「酒呑童子。俺は歌磨呂の話を聞きに来たのだ、もう少しだけ待ってやれよ。無理をすれば体が壊れるぞ」


「あ……」


 歌磨呂の中の酒呑童子が彼を殺そうとしていた。自力で、目覚めてしまおうとしていた。嬉しいことだが、まだ早い。


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