惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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決断と再会

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 あぁ、ここまで自分のことをしゃべったのは、酒呑童子と朔以外で初めてだな。朔以外の歴代の秋月にも安倍にも、キツネにもヤモリにも話したことはない。


 それを、酒呑童子の生まれ変わりだからという理由だけでしゃべってしまった。


 早く目覚めてほしい。昔話を聞いて、早く目覚めたくなるようになってほしくて。彼が目を覚ますためなら、何だってできる。


 この命を捧げたってかまわぬさ。俺が死ねばまた、約束の力が働くだけだからな。


 俺は竿を振り、遠くへ針を飛ばす。50センチ超えの大物が釣れるといいな。上手く釣り上げられる自信はないが、隣に酒呑童子がいてくれると思うと。見せつけてやりたい。


「蒼輝さんの話を聞いていると、酒呑童子さんに会ってみたくなりました。私の中にいる、こんなにも近くにいるのに会えないなんて」


「会って、どうするんだ?」


「彼がどんな方なのか、自分の目で見て感じてみたいのです。私を手放してでもこの体を授けるに値する方なのかどうかを。あっ!自殺願望とか、そういうのじゃないですからね?」


 やはり、1番頼りにするのは自分自身というわけか。それもそうだろうな。人格が消えるとかいうものではないが、昔の鬼の精神が現れるのだ。怖いだろう。


 だが歌磨呂は、不安そうな顔をしない。


 自分のことなのに、自分よりも他人の俺の方が詳しい。悔しいだろうに。歌磨呂は「さて、これは本格的に困りましたね」と顎に手を当て目を細める。


 こいつは古風な家の生まれなのか、1つ1つのしぐさや話口調、物腰が柔らかく丁寧。まぶたの伏せ方、目の動き、唇のわずかな動きまでが美しい。


 全然、困った風には見えないが。こいつは今、何を考えているのだろう。


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