惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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親友と金魚のフン

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 本人はもう慣れたと言っているが、ほどほどにしないと陰陽師としての信頼と職を失いかねない。


 実は安倍の次に手練れの陰陽師なのだが、この性格ゆえ出世は望まないのだという。最低限の生活ができるくらい稼げるならばそれ以上は必要ないと。


 欲のない奴だ。俺のことは陰陽師達の中でも噂になっているらしい。寝るだけしか能のない、ザコい鬼だから退治するに値しないと。


 失礼な話だ。俺だって人間を複数殺め、1人を食って鬼になったのだ。その気になれば町で暴れることくらいできる。面倒だからやらないが。


「そうか。先に言っておくが…………この惰眠童子に手を出してみろ。あんたの目を潰し耳をもいで、腕を引きちぎり足を砕いて、何日もかけてじっくり痛めつけてから殺してやる」


 俺に興味津々な朔が手を伸ばし、俺の肩に触れた。その瞬間なぜか嫌な感じがして、ビクッと震えてしまった。


 それを酒呑童子が見逃すはずがなく、ミシミシと骨が軋む音が聞こえるほど強く朔の腕をつかむ。


 いつものような余裕はなく、本気で朔を牽制している。唸るような低い声で、ギラついた本気の赤い目は怒りを表している。


 怖い。酒呑童子の真剣な顔、もう何度目かの。けれど今までで1番恐ろしいと、頼もしいと感じた。守られたんだ。仲間だから。仲間、だから。


 その時初めて、俺は酒呑童子の心の強さを知った。彼にとって俺は大事な仲間だから、たとえ相手が友のような朔でも殺す覚悟がある。


 俺が前に殺されかけたから。本来は宿敵である陰陽師が、その気はないと言っても信用しきれないほど。酒呑童子は、俺が殺されるのを恐れている。



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