惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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親友と金魚のフン

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 長く一緒に暮らし、酒呑童子にはたくさんの仲間がいることが分かった。酒呑童子の次に強いと言われている、彼と特に仲が良い茨木童子。


 彼は酒呑童子とは正反対の性格で寡黙だが、新人の俺をすぐに受け入れてくれた。


 鬼の世界は頭領である酒呑童子が中心。彼が俺を認めるなら他の鬼達も俺を認めざるを得ない。その逆もまたしかり。


 当然、寝ることだけが取り柄の弱い俺を気に入らない鬼もいる。嫌がらせもされた。だがそのたびにどこからともなく酒呑童子が現れ、鬼達を叱る。


 本当に、どんなに離れていても現れるんだ。ちょっと怖かったくらいだな。鬼を叱る時の彼は声が低く、唸るように静かに怒っていた。


 俺が寝るだけで弱いのは事実だ、虐められるのもそのうちなくなる。と言っても、彼は「あんたは俺様のものだ。俺様のものを傷つけられるのは我慢ならねぇよ」と言って、それからも守ってくれた。


 だが守られれば、余計に気に入らないやつがいる。ある日、俺を崖から突き落とした男が酒呑童子に見つかった。


 寝起きだったからよく覚えていないが、男に呼び出されてついて行ったらいきなり蹴り飛ばされて。慌てて鬼化しようにも上手くいかず、死を悟った。


 だが死ななかった。同じ崖から身を投げ出して、一瞬で鬼化した酒呑童子が俺の名を叫びながら手を伸ばし抱きしめた。そのまま彼の体に包み込まれて共に落下。


 俺はほぼ無傷に等しかったが、庇った酒呑童子は頭を大きく切って、腕と足の骨が折れて、背中に太い枝が突き刺さっていた。


 それでも「怪我はねぇか?」と俺の心配をする馬鹿が、この時ばかりは金色に輝く神様に見えた。にじんで、よく見えなかった。


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