惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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遠い昔の思い出

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 どうだ、と言わんばかりに筋肉の盛り上がった腕を組んで偉そうに俺を見つめている。凛々しくて格好いい、まるで鬼の神様のようだ。とても綺麗で見とれた。が。


「すまない。有名でかなり強い鬼がいるのは知っているが、名前まではわからん」


「なぁっ!?こ、この俺様を知らないだとっ!!くうっ……さてはあんた、とんでもない田舎者だろう?そうに違いねぇ。だが、気に入った!今からあんたは俺様の仲間だ。そばに置いてやるからありがたく思えっ」


「いや、結構です」


「そう言うな。あんたは鬼になってから日も浅いようだし、色々困っていることがあるんじゃねぇか?鬼歴が長ぇ俺様が直々に面倒みてやるって言ってんだ、遠慮しねぇで素直に従えよ」


「………………」


 俺は鬼で、彼も鬼。そのうえ彼は鬼の長。見返りに何を求められるのかわからないが、縋っても損はしないはず。


 俺は色々と考えを巡らせた後、深呼吸して鬼化を解いた。小刀をしまい、頭を下げる。


「よろしくお願いします。実は鬼になったのはほんの数日前で、鬼の力が勝手に発動するのが恐ろしくて町にも行けず人に会うのが怖いんだ」


「そうかそうか、よろしくな。まずはじっくり話を聞いてやるからあんたの家に案内してくれ、近いんだろう?」


 あ、すごく嬉しそう。パアッと、顔の周りが明るくなった。鬼の長として仲間が増えるのはそんなに嬉しいことなのか。嫌な気はしないな。


「結構歩いたからな、そんなには近くはないぞ」


 鬼化を解いた酒呑童子と共に来た道を歩き、本名は?と聞けば「さぁな、忘れちまった」と笑って誤魔化された。


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