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不和歌麿呂
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しおりを挟む斬り落とされ、首だけになってもなお死なずに渡辺綱に食らいつこうとしていたと、言い伝えられている。アイツらしい、執念だな。
“橘時久”と再会しなければならないという使命感とその痕があるということは、歌磨呂が酒呑童子の生まれ変わりだという何よりの証拠だ。
俺と酒呑童子の関係は特別だ。よく友達以上恋人未満と聞くが、俺達の場合は恋人以上家族と同等の親友。
ゆえに俺達はある約束を交わした。どちらかが先に死んだら、死んだ方は生まれ変わって必ずもう1人に会いに行く。もう1人はそれを待ち続ける、と。
約束通り、先に死んだ酒呑童子が生まれ変わって俺の目の前に姿を現すまで、俺は待ち続けた。千年待った。
先に死んだ酒呑童子は体が滅び一切の記憶を失っても、別人に生まれ変わってでもこうして俺の目の前に姿を現してくれた。
「あぁ……あぁ、どうやらその話、本当のことのようですね。不思議です。長年の謎が解けてスッキリしたのに、今度は心の中がザワザワします。私の中の酒呑童子さんが騒いでいるようです」
「アイツはいつも騒がしいやつだったからな。歌麿呂とは正反対だ」
「ずっと感じていた気配、モヤモヤの正体は酒呑童子さんだった。今ならハッキリ感じます。えぇ、とても騒がしく、熱いお方ですね」
「暑苦しい、の間違いだ」
胸に手を当て目を閉じる歌麿呂。その奥に感じているのか、アイツを。歌麿呂は目を開けて、笑った。怖くはないのか?
あれか。今は落ち着いて受け入れているが、家に帰って我に返ると大パニックを起こしてしまうタイプか。夜中に発狂だけはするなよ?
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