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偶然は必然
6P
しおりを挟む小娘のことかもしれないと相談したところ、安倍にもその正体はわからないという。代わりに、安倍家当主お手製の札を2枚持たされたと。
2枚とも、種類は違うがあの黒いモヤのように災厄の原因らしきものに直接投げつけて実体化させる札だ。和比呂も作れるが安倍のは陰陽師で1番強力だ。何しろあの、安倍家だからな。
2枚の札の違いは追々わかるだろう。安倍も昔とは違い、現代に適応するよう進化している。
「安倍様の話は終わりだ。はぁ……何で日本人なのに英語を学ばないといけねぇんだよ。中国語まであるし」
昼休みが終わり英語の授業が始まったようだ。和比呂のボヤキは完全に無視する。俺は英語はもちろん、日本語でも現代の言葉遣いはわからんからな。
苦手な授業はやる気が起きないのか、和比呂は俺との会話に集中していた。
小娘の絵の腕は誰もが認めるもので、美大へは学校推薦、しかも校長の推薦での入学が決まっているんだとか。去年の美術コンクールで金賞をもらったとか。
話は小娘の話から、俺がキツネと出会った時の話、それから和比呂と小夜の話へと変わった。
小夜は年上だからなのか、子供の頃から年上ぶることも逆に次期当主にひれ伏すこともなかった。俺が会った時の、おしとやかではあるが強い意志を持ち度胸のある女だった。
和比呂が宿題や鍛錬をサボっていれば容赦なく叱り。怪我をすれば血相を変えて飛んできて一生懸命に手当てをして。和比呂の父親が亡くなった時は突然のことに泣くこともできなかった彼を、ただ静かに抱きしめた。
小夜は他の度の男にも心が動くことはなく、和比呂を一途に愛している。それは生まれによるものではなく、運命だと思っていると和比呂は言った。
火がついたらしい。初めて小夜の手料理を食べた時の話になった時だった。和比呂の声が不自然に止まった。
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