惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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偶然は必然

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 黒地に、腹部に白が混じった大きな鷲に変身した式神は、黄色いくちばしから和比呂の声を吐き出す。


 やっぱり鷲の式神だったか。黒鷲は、俺が腕を差し出すとその上に爪が食い込まないように止まった。こういう気遣いは和比呂らしい。


「あんたにだけ話があるんだけどよ」


「その前に確認したい。今、お前達の教室の窓はどうなっている?妙な、黒いモヤはかかっていないか?」


「窓?いや、モヤなんて見えねぇけど。黒いモヤなんかあったら他のやつらが騒ぎ出すだろ。あー、ウザいくらいの青空なら見えるぜ。どうした?や、ちょっと待て……」


 今も俺の目には黒いモヤが窓に――小娘と和比呂がいる教室の窓に張り付いているのが見える。教室の中を覗き込んでいるのか?和比呂にも見えぬということは、と思っていたが。


 少しの沈黙の後、鷲は俺をジッと見つめて「うげっ、認識した」と低く呟いた。


「仕事用の目で見えたぜ。あんたにもこれが見えるが他の人間には見えないということは、妖の類か何かか」


「さぁな。おい、何をした?」


「ウネウネ気持ち悪いから呪を放っただけだ。呪が効けばモヤは妖ということに違いねぇ。どこに行った?」


「屋上にいる。驚いただけみたいだな、また降りてきているぞ」


 モヤは一瞬、弾かれたように窓から離れて屋上に移動した。が、またモゾモゾと、恐る恐る壁を伝い窓へと向かっていく。


 和比呂は霊や妖が見える陰陽師の目を使っている。そして力を言霊に乗せて呪を放った、陰陽師特有の技だ。朔もよく使っていたな。


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