惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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「……蒼輝様?やはり体調がすぐれないご様子。ご無理をなさらず、私共におっしゃって――」


「あっ旦那、今まで寝てたんじゃって?学校の近くにいるって言ってたのに、全然近くじゃないのじゃー」


「心はいつもそばにある」


「こんな時ばっかり格好いいこと言っちゃって。あたしは突然和比呂君に話しかけられて、しかも自分は陰陽師だの惰眠童子の知り合いだの言われて大パニックだったんだからね」


「その様子だと、大体は和比呂の式神から話を聞いているようだな」


 遠くに行くから式神は消えたんだと、客間でくつろいでいた空気の読めないアホキツネが1枚の札をヒラヒラさせる。和比呂の式札か。


 小夜は晩飯を用意するからそれまでここで待っているようにと部屋を出て、俺は残った2人に学校でのことを聞いた。


 当然だが突然の転入生は特別扱いされる。ましてやキツネは髪の毛が真っ白で語尾に「じゃ」とつける独特なしゃべり方なのだから、一躍有名人。


 そのキツネの親戚という設定になっている小娘も少しは影響が出たようで、今までは死神と恐れられて近づく者はいなかったのに声をかけられたと嬉しそうだ。


 これをきっかけにまた友達ができればいいな、と小娘は少し寂しそうに笑った。


 そうだな、それくらいの欲は素直に口に出した方がいい。どこかで見ているであろう神様が、気まぐれで願いを聞き届けてくれるかもしれないしな。


 なんて、鬼の俺が神様なんかを信じてはいないが。残りわずかな時間でも、小娘に友達ができればいいと、そう望んでいる俺がいる。


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