惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

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あきづき

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「何者だ?その扉は、普通の人間なら開けられるはずだ。関係者以外立ち入り禁止だけどな」


「お前こそ、この神社の者か?俺はこの向こうにいる者に用がある」


 突然声をかけられ振り向くと、そこには制服姿の少年がいた。ポケットに片手を突っ込み、片手はダランとぶら下げている。


 その、ダランとぶら下げている手の、指先が小刻みに動いている。イラついて、というわけではないようだな。


 高校生か?なら小娘と同い年くらいか、下手すると同じクラスだな。授業はもう始まっているはずだが。


 俺をまっすぐ睨み付ける眼光は鋭利で、斬りつけられそうなくらいの怒気をはらんでいる。と同時に、焦りが垣間見える。


 弱い、な。この神社の関係者かもしれないがただの人間か?だが、こんなに近くに来るまで、こいつの気配を感じなかった。


 俺は体ごと少年の方を向き、雲1つない青空を仰ぎ見た。


「名を名乗れ。何の用があって人外がこの神聖な場所に足を踏み入れたか、聞かせてもらうぜ」


「今はわけあって蒼輝などと呼ばれているが、長く惰眠童子と呼ばれていた。用件は……話すと長くなるぞ?あぁそうか、なるほど。その気配、お前が今の当主か」


 少年は俺の名を聞くとピクッと眉尻を上げ、いきなり俺に向かって走り込んできた。


 しかも制服の内側に手を突っ込んで取り出したのは短い金属の棒。走りながら一振りするとそれはたちまち少年の身の丈よりも長い、錫杖に変化した。


「本物かどうか確かめる。これもしきたりだ、悪く思うなよ」


 ヒュンッと少年の姿が消え、次の瞬間には背後に現れ錫杖を振り下ろす。が、これでも俺は鬼だ。振り向くことなく迫り来る錫杖をつかむと、強く振り回した。


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