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不幸は幸運
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しおりを挟む「そうだな。今の時代、その見た目で語尾に“じゃ”なんてつけるのはお前くらいだ。ジジイ呼ばわりされるぞ。虐めるには最高の標的だしな」
キツネと小娘、同時に2人から「自分のことは棚に上げて?」みたいな目で見られた。俺のいで立ち、時代の遅れはほっとけ。
ちなみに、キツネも美術部員としてそばにいてもらうから入賞くらいできる作品を作れよ?と、ショックで飛び出たキツネの白い尾をスルリと撫でた。
これを絵筆に描けば、多少なりとも芸術的な絵が描けるんじゃないか?なんて、尾が敏感なキツネが驚いて悲鳴を上げた声で掻き消されてしまった。
すかさず頭を叩いてやる。今、何時だと思っているんだ。隣の家がとても離れているので近所迷惑にはならないが、夜10時半を回ったら静かにしろ。
キツネは「個性が死ぬ時代じゃ……」と涙ぐみ、膝を抱えていじけてしまった。そんなことをすれば小娘に襲われるぞ?可愛いからな。
白い頭の上でペタンと垂れた白い狐の耳、フサフサの白い尾は床に落ちた綿菓子のよう。ほら、今にも小娘が飛びついてしまいそうだ。
ほら、両手をわなわなさせて凝視している。まるで獲物を狙う肉食獣か。身を低くして、瞬きもしないで今にも襲いかかりそうにしている。
「くっ…………と、ところで。あんたはあたし達が学校にいる間、どこでどうしてるつもりなのよ?近くにはいるって言ってたけど、まさか双眼鏡で覗いているんじゃあないでしょうね!?」
あ、我慢したな。わざとキツネに背を向けた小娘が、俺をジロジロと見る。
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