惰眠童子と呼ばれた鬼

那月

文字の大きさ
上 下
34 / 218
ヤモリは家守

8P

しおりを挟む

「はぁぁぁ。また新しい家を探さないといかんのじゃ……気に入ってたのに……」


「あら、出て行けって言ってるんじゃないわよ?荷物を下ろして、客間にでも持っていけばいいわ。この家にあたし1人で住むには広すぎるって思っていたんだから」


「か、神那ちゃん……」


 ほう、このキツネを本当に住まわせる気か?食費が大変だぞ、キツネはよく、いや、この細身でえげつない量を食うからな。それに――


「いいのか?キツネはこれでも、人間の姿になれるオスだぞ」


 俺は家の中を見渡しながらそう言い、キツネを見る。そして小娘に目を向けると、キョトン。あぁ、やっぱりな。考えてなかったか。


 忠告してやった瞬間、さっそく荷物を客間に運んで戻ってきたキツネがボンッと顔を真っ赤にさせた。ほう、風呂でも覗き見したことがあると見たぞ。


 こいつの性格を考えると何かの拍子に見てしまった――風呂に入っている間に天井から降りて散策していた時に誤って――か、純粋に好奇心でこっそりか。


 が、小娘は俺の忠告を理解してもシレッとした顔を横に振った。


「女性がダメなんでしょ?キツネ君にそんな度胸があるとは思えないわ。それにあたし、これでも護身術は心得ているの。襲ってきたら返り討ちにできるが自信あるわ」


 ほほう、これは意外と強気な。この体格のキツネを撃退できるとは。というよりキツネの場合、本当に委縮して手を出せなくなるんだろうが。


 自信満々、さも当たり前のように言ってのけたが。キツネはこう見えても、強いぞ。


 女が苦手で体がデカいだけのヘタレだと笑っていると、あとで痛い目を見るのは小娘だからな。キツネは普段、獰猛な化け狐の本性を抑え込んでいるに過ぎない。俺は忠告をしたからな。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...