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ヤモリは家守
8P
しおりを挟む「はぁぁぁ。また新しい家を探さないといかんのじゃ……気に入ってたのに……」
「あら、出て行けって言ってるんじゃないわよ?荷物を下ろして、客間にでも持っていけばいいわ。この家にあたし1人で住むには広すぎるって思っていたんだから」
「か、神那ちゃん……」
ほう、このキツネを本当に住まわせる気か?食費が大変だぞ、キツネはよく、いや、この細身でえげつない量を食うからな。それに――
「いいのか?キツネはこれでも、人間の姿になれるオスだぞ」
俺は家の中を見渡しながらそう言い、キツネを見る。そして小娘に目を向けると、キョトン。あぁ、やっぱりな。考えてなかったか。
忠告してやった瞬間、さっそく荷物を客間に運んで戻ってきたキツネがボンッと顔を真っ赤にさせた。ほう、風呂でも覗き見したことがあると見たぞ。
こいつの性格を考えると何かの拍子に見てしまった――風呂に入っている間に天井から降りて散策していた時に誤って――か、純粋に好奇心でこっそりか。
が、小娘は俺の忠告を理解してもシレッとした顔を横に振った。
「女性がダメなんでしょ?キツネ君にそんな度胸があるとは思えないわ。それにあたし、これでも護身術は心得ているの。襲ってきたら返り討ちにできるが自信あるわ」
ほほう、これは意外と強気な。この体格のキツネを撃退できるとは。というよりキツネの場合、本当に委縮して手を出せなくなるんだろうが。
自信満々、さも当たり前のように言ってのけたが。キツネはこう見えても、強いぞ。
女が苦手で体がデカいだけのヘタレだと笑っていると、あとで痛い目を見るのは小娘だからな。キツネは普段、獰猛な化け狐の本性を抑え込んでいるに過ぎない。俺は忠告をしたからな。
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