惰眠童子と呼ばれた鬼

朝霧神那、襲来

５P

　――翌日。俺は軽く仮眠をとっていたがぐっすりは眠れず、常に意識が背中に集中していた。彼女は、昨日と全く変わらない。動いた気配もない。


　いや、もしかしたらさすがに排便のために出入りはしたかもしれないが。ほぼ完璧に同じ位置に座っている。


　――３日目。１か所を除いては昨日と変わりはない。変わったのは――


「ぐうぅぅーきゅるるるー……」


　彼女の腹が先に音を上げだしたことか。


　さぞ顔を真っ赤にさせて恥ずかしがっていることだろうが、振り向くものか。１日中腹は悲鳴を上げていたが、それでも彼女は動こうとしなければしゃべろうともしなかった。


　俺は俺でずっと同じ姿勢、小娘に背を向けたまま横になって目を閉じていたさ。気になって、珍しいことに眠れないんだが。


　あぁ、夢の続きを見られなかったじゃないか。どうしてくれる？俺の唯一の楽しみだったのに。


　名前にまでなった俺の個性、すなわち睡眠。それを妨害したんだ。惰眠童子である俺から睡眠を奪えば何が残る？童子、鬼だと？違うな。そんな、聞こえの良いものじゃない。


　いつもなら勝手に睡魔が手を引いて、何年も寝っぱなしの時もあるというのに。眠りに落ちることもないなんて。