花喰みアソラ

那月

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手を伸ばして

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「う…………な……な、な、な、なっ!?今の何っ!?あ、あたし……っ」


「ほう、面白いものを見てしもうた。これは、戻ってきた後のあやつの話に期待じゃな」


「ふ、藤の君さん!休んでたんじゃなかったんですね。って、またそんな嬉しそうに。期待しなくもないですけど、きっと藤の君さんとミラさんのお話だと思いますよ?」


 全く気配がなくて、突然の声にびっくりして跳び上がっちゃった。もう、趣味が悪い。振り返ったら藤の君さんが楽しそうにニヤついているのよ。


 こんなに絡んでくる花妖は初めてだわ。実は暇なの?力を使って縮んでるし、お礼にあとで肥料をあげようかしら。


「この流れでわかりきったことを言うでない。ぶっ冷め、というやつじゃ。む、なんじゃその顔は?」


「いえ、なんだかあたしの中で藤の君さんの印象が変わったなぁって。最初はもすっごく神々しくて近寄りがたい、肌がピリピリするくらいの強い力に当てられていたけど」


「当たり前じゃ。わしはおぬしの何十倍もの時を生きておるからの。あと百年生きれば神に昇格するやもしれんの」


「へぇ、それはすごいですね。今のうちに拝んでおこう。じ、冗談ですっ!ほら、そういうあたしの冗談に乗ってくれるのも冗談を言うのも、親しみやすくって安心しました」


 藤の君さんは花妖にはもちろんのこと、人間にもとっても優しい。それは長く生きているからとかじゃない。


 藤の君さんの、人間でいうところの性格。困っている人を見つければ手を貸さずにはいられない。あたしもそうだから、似てるの。


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