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両手を広げて
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しおりを挟む当然、アソラさんは「多すぎる!今回は無理だ、諦めないとお前が死んでしまう!」と彼女の腕を引く。
特殊な力を持つ花喰みでも、彼女は人間だから限度がある。死んでしまうかもしれないじゃない、確実に死んでしまうから。
それでも彼女はアソラさんの手を振り払った。自分と同じ色の深い空色の瞳をまっすぐとらえて「この藤は生きることを諦めていない。わかるの。地中に張り巡らされた根から必死に栄養を吸い込んで、なんとか病気を治そうと戦ってるって」と言った。
幹に触れただけで地中のことまでわかるのかしら?きっと、アソラさん以上に植物のことを強く想っているからこそなんでしょうね。
アソラさんはそれ以上何も言えなくて。背を向けてコブだらけの幹に抱き着いた彼女が「ありがとう」と、優しく微笑んだ。
頬を、熱い涙がこぼれ落ちるとミラさんが藤の君さんの病気を取り込んでいく。
時間はそうかからなかった。広く大きな木の隅々まで蝕んでいた病気は全てミラさんの体に移され、藤の雨は息を吹き返す。
代わりに、ミラさんは命を失った。あたしと同じ20歳。あまりにも若すぎる終わり。
「わしはずっと、ミラが来るのを待っておったのやもしれん。老齢ゆえ、じわじわと時間をかけて蝕んでゆく病にかなわなんだった。世話をしてくれる人間に気付いてもらおうとしたが、手遅れじゃったしの」
「死を受け入れてでも藤の雨を救いたかった。今のあなたがあるのは、ミラさんのおかげなんですね」
「わしの身代わりになるのに、砂漠の砂1粒とも迷いはなかったの。正直、助けてくれるとは思うておらなんだったが」
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