花喰みアソラ

那月

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ツンツントゲトゲ

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 彼が怪しい人だから調べ上げるとかじゃない。聞かずに、逆にあたしが聞かれたら包み隠さずなんでも話しちゃうからそう思ったんでしょうけど。


 知られて悪いことはないんだし、知られたくないことはないもの。あたしは全てがオープン、ウエルカムなのよ。


 そう説明するとアソラさんは、予想通りだったみたい。特に驚くこともなく「そっか」って、机に飾ってある多肉植物に霧吹きをかける。


「お人好し過ぎて怖いくらいだよ。そうだね、君が言う通り俺は公私ともに自分の情報を明かすことは禁じられているんだ。でもミサキさんならいつか、全てを打ち明けられるようになりたいな」


「え、それってどういう――」


「そろそろ閉店の時間だよね。外の花達をしまってくるよ」


 自分から話しかけておいて、都合が悪くなったら逃げるなんて卑怯よ。シュッと引っ掻かれたみたいでなんだかモヤモヤする。


 プクゥと頬を膨らませて彼を見つめてみるけど。彼は鉢植えを手にせっせと動き回るばっかりで、あたしの視線に全然気づかない。


 何よそれ。花喰みや花妖のことは巻き込まれちゃったわけだし、なりゆきで知ることになったんだから仕方ないって言いたいの?


 近づきたいのか離れたいのか。でも「いつか、全てを打ち明けられるようになりたい」ってことは、近づきたいって思ってるってことよね?


 まるで美味しいエサをちらつかされて飛びついた瞬間に隠されちゃったみたい。アソラさんのこと、もっとよく知りたいって思っちゃうじゃない。


 あーあ。アソラさんがただの行き倒れだったら、ご飯を恵んであげてそれで終わりだったんでしょうに。


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