花喰みアソラ

那月

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綺麗な花にはトゲがある

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 すると彼女は「ラッピング、私がやってもいい?」と首をコテンと傾ける。可愛いです。そんなお願いをされちゃったら、お任せします。


 ふふっ、本当に彼のことが大好きなのね。やり方を教えているんだけど、彼のことで頭がいっぱいみたいで全然違うことをしているわ。大丈夫?


「あれ、そっちにもお客さんがいたんだ。ねぇ、赤いバラの鉢植えってあった――」


「アイ?こんなところで何して……それ、赤いバラ。何だよ、花で僕のゴキゲン取りでもしようっていうのか?あんな必死に僕を拒絶したくせに」


 アソラさんが、接客していた人を連れてやって来たみたい。あたしが顔を上げると、彼女もつられて顔を上げて目を見開く。


 彼女よりも背が高い男の人。ほんのりパンの匂いがする気がする、ってもしかして!?


「ディールさん…………わ、私はただ、ディールさんのことを本気で愛しているから。別れたくなくて仲直りしようって、どうしてもこの想いを伝えたいから花を……」


「もしかして、さっき話していた喧嘩した彼女さん?彼もね、仲直りをしたくてプレゼントを買いに来たんだよ。2人共後悔して、お互いを想って同じ花を贈り合うなんてね」


 たしか彼女の話によれば彼、今日は夕方まで仕事なんじゃ?でもこの2人の感じ、そうよね?アソラさんも彼から彼女との喧嘩のことを聞いているみたいだし。


 アソラさんが言うように、2人とも同じことを考えるならもう仲直りできるわよね?彼女は赤いバラの切り花を彼に、彼は赤いバラの鉢植えを彼女にプレゼントして抱き合ってくれたら感動なんだけど。


 なん、だけど。彼女は切り花をギュッと胸に抱えてうつむいちゃってるし、彼はこめかみに青筋を立てて怒ってる?


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