花喰みアソラ

那月

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綺麗な花にはトゲがある

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 目が合ったわ。深い空色の2つの瞳で、あたしをジッと見つめている。どうしたの?


「……あ、い、いらっしゃいませー!」


 逃げた。お客さんが来たみたいで、摘んでいた花がらとハサミを放り出して行っちゃった。本当に、どうしちゃったのかしら?


 お花に関してはあたしより彼の方が詳しいし。接客は彼に任せて、あたしは水やりを続ける。って、彼に意識が行っちゃってたからバラエリアがビショビショに!?


 慌てて余分な水気を取っていると、コツンコツンとヒールの音が近づいてきた。


 わぁ、綺麗な女の人!モデルさんみたいに背が高くて足がスラッとしていて、さらに顔を上げれば小さい色白の顔が見えたわ。


 やっぱりモデルさんなんじゃない?細く艶のある漆黒の髪は細くユルフワで柔らかそうだし、だけどクリクリした夕方色の紫の瞳は暗く陰っている。


「いらっしゃいませ。あの、どうかされましたか?」


「あ、こんにちは。その…………恋人と喧嘩をしてしまって、仲直りのために花を買おうと思って来たんですけど。どれにしようか決められなくって」


 そう言って彼女は悲しそうに、辛そうに胸を押さえて花達を眺める。どうして喧嘩をしちゃったんだろう?


 彼女のプライバシーにかかわることだから深い話はできないけど。仲直りなら紫色の小さな花が可愛いカンパニュラ、花言葉は“後悔”。


 3号鉢のをオススメして手に取ってもらったんだけど。ちょっと眺めただけで元の場所に戻しちゃった。


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