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綺麗な花にはトゲがある
3P
しおりを挟む「ありがとう。でもやっぱり、アソラさんは食べないんですね」
せっかく作ってくれても用意されている朝食はあたしの分だけ。アソラさんの前にはコップ1杯の水と、自分で選んだらしい枯れかけのお花が数本。
「これで十分。匂いで美味しそうとかはわかるけど、花以外………………味がわからないから。どんなに美味しいものでも味が濃いものでも、どれも俺にとっては無味。だから、花しか食べないんだ」
突然打ち明けられた、普通のご飯を一切食べない理由。味がわからないって。お花以外何の味もわからないなんて、花喰みだから?なら、他の花喰みも皆そうなの?
「花喰み自体の数は少ないんだけど、たぶん俺だけじゃないかな?最弱だし、力が悪い方に偏ってるしね」
そう言ってアソラさんは笑っているけど。笑えないですよ。しかも「生まれつきだから、今まで1度もちゃんと食べたことがない」なんて聞いちゃったら、胸が苦しくなった。
「……だったら、ますます食べる練習をしなきゃ。食べることに慣れたらきっと、いつかは美味しく食べられる時が来るからっ!」
「いいよ。嬉しいけど、ミサキさんは1人で店をやりながらなんだし金銭的にもきついでしょ?俺の食費なんて負担にさせたくないし、俺は花喰みらしく花を――」
「アソラさんは花喰みであるよりも前に、1人の人間です」
朝食を食べ終わって、あたしがお花達に水やりをしているそばでアソラさんが花がら摘みをしている。時々、摘んだ花を食べているわね。
自然とそんな言葉がこぼれた。ずっと「んー、美味しい」って嬉しそうに呟いていた彼が急に静かになったから、水がかかっちゃった!?って慌てて振り返る。
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