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大好きなんです
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しおりを挟むとりあえずの手当てが終わって道具を片付けていると、彼があたしに目を向けているのに気が付いた。包帯が巻かれた腕を眺めて、それからまたあたしに目を向けて。
不意に彼の手が伸びてきて、ヨーグルトとスプーンを手に持った。あ、食べるの?小さいスプーンに半分だけ掬って、ジッと見つめて、匂いを嗅いで、それから口に運ぶ。
食べた。でも、首をかしげて悲しげに目を伏せるとあたしに返した。
「ごめん、やっぱり無理みたい。もう動けるから、この布団は元に戻すよ。上は君の家なんだよね、上がってもいい?」
「もう大丈夫なの?お花はそんなに栄養価も高くないのに、少しだけで回復しちゃうのね。汚部屋じゃないからどうぞ」
ほんとだ、顔色が戻ってる。布団をクルクル巻いて担いだ彼は時々うめき声を上げながら、ふらつきながらも階段を上がって部屋に敷いた。
大人の男性だとは思えないくらいにひ弱というか、頼りない。今日から居候するのね。
物置と化してる部屋があるからそこを片付けて彼の部屋として使ってもらおうかしら。お金に余裕はないんだけど、彼の生活用品もそろえてあげなきゃ。
なんて考えていると、彼があたしをジィーッと見つめているのに気が付いた。もしかして声をかけてくれていた?
その距離があまりにも近くて、あたしは「わぁっ!」って声を上げて跳び上がった。顔が熱い。絶対、耳まで真っ赤になってるわよ。
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