恋人以上、永遠の主人

終末の先の景色

２P

　恐ろしいことを言いながらも表情は穏やかで、さっきまであたし達を瀕死にまで追い込んでいた羅刹と同一人物だとは思えないくらい。


　でも彼は羅刹。ううん、本来の羅刹よ。いや、もしかしたら本来の、でも新しい羅刹なのかも。


　だって羅刹の中にはカレスがいる。短い間でも１人の人間だったカレスは、羅刹と離れることによって個性を身に着けた。


　羅刹ではない、カレスとして得たものがたくさんある。それが羅刹に取り込まれ、新しい羅刹になった。マクベスみたいに、新生羅刹、爆誕。


「君達ってほんっとーにしつこいんだよォ、もう疲れたよ。だから大人しく休んでいることにしたァ」


「それは、体力が回復したらまた人間を滅ぼそうと考えているってこと？」


「さァ、それはどうだろうな。その時のワタシの気分次第かもねェ。壊したくなるような世界だったら、もう一息に壊そうかなァ」


「その時はまた、俺達の意志を継ぐ者達がお前の前に立ちふさがるさ。想いのつながり、絆が断ち切られることはないからな」


「散々やられておいてよく言うよ、マクベス。でも、君達と全力で戦うのも楽しかった。次がないのが残念だよ」


　あたし達の元へ歩いてきた羅刹が纏う風は穏やかで、笑いながらマクベスの傷を指でグリグリしちゃってるわ。


　小悪魔？鬼畜な悪戯好きな性根は変わらないらしいわね。マクベスの血で赤くなった指先を見て「あぁ汚い」なんて、理不尽。


　笑っているけれど、酷く疲れた様子。さっき言った通り、人間を滅ぼして世界を壊すことはやめたみたい、今は。


　この先の未来、羅刹が壊したくなるような世界にならなければいいんだけど。そこはアキラさん達に任せるしかないわよね。