恋人以上、永遠の主人

羅刹とカレス

７P

　もう羅刹の体はほとんどが元の人間の姿に戻っているわ。残っているのは首から上。でも、それもすぐにカレスの力で元に戻る。


　最初に出会った時の姿に戻った羅刹は顔を前に向け、鋭い眼光でカレスを睨み付ける。


「羅刹……っ」


　まだ戦う意思があるのかと、焦ったカレスはしかし彼の名前を呼ぶことしかできない。


　あたしは銃を羅刹に向け引き金に人差し指をかけた。傷が心臓にまで達しているとはいえ、神様級のとんでもない治癒力で傷が塞がろうとしている。


　だから動けるようになる前に足を撃ち抜いてやろうと思ったのに。気づいたカレスが彼を隠すように、あたしと彼の間に立った。


　カレスはもう手を握っていない。羅刹の様子が変わったから。


「ワタシが一体何年、盲目のまま生きていたと？光を感じない、闇の中では生きた心地がしなかった。何十年も眠っていた時もあった」


「はい」


「いつも、君のことを心配していた。どこか遠く離れた場所で君が生きていることを感じながら、どこにいるんだろう？どうやって過ごしているんだろう？って、気になって仕方がなかった」


　だって目玉、だものね。まさか人間の体を持ってカレスという１人の人間として生きているとは夢にも思わないでしょ。


　カレスを想う心が羅刹にもある。良心を失っても消えることのない強い想い。


　羅刹は、手を伸ばした。ユルユルと持ち上げられた両手がカレスの首のあたりに伸びていく。首を絞める気！？


　違う。首の横を通り過ぎ、１歩踏み出した羅刹は体を密着させる。カレスの背中に両腕を回し、ギュッと弱々しい力で抱きしめる。


　誰にも愛されることのなかった羅刹が、愛され方も知らないなりに不器用に、恐る恐る愛を求めた。